令和5年度では以下の3つの研究を行った。研究1では令和4年度に実施した青年期の子どもとの親子間葛藤に関する自由記述形式の調査結果のうち,親の親子間葛藤を解決するための行動に関する回答を整理し,親子間葛藤のエピソードとそれが生起する背景要因の分類を行った。結果として青年-両親間葛藤は様々な状況によって生じており,子どもの個人内要因だけでなく,両親の心の問題や養育スタイル,受験や学校の要因等が背景要因として関与していることが明らかにされた。また,親が親子間葛藤を解決するためにとった行動の分類を行い,それに基づいて新たに親子間葛藤解決行動尺度42項目を作成した。親子間葛藤解決行動尺度は,消極的対処行動と積極的対処行動によって構成され,後者は対自的な親自身の認知的,情動的,行動的調整と,対子どもとしての要求性,応答性,相互交渉の内容を含む行動から構成された。これらの結果の一部は日本発達心理学会第35回大会でポスター発表を行った。続いて研究2では,中学生の子どもをもつ父親と母親それぞれ約400名を対象にしてオンライン調査を実施し,中学生の子どもとの親子間葛藤とその原因帰属,親子間葛藤による心理的ストレス,葛藤解決行動,養育態度,子どもの成長に対する認知と感情,親子の相互信頼感の測定を行った。そして,新たに作成した親子間葛藤解決行動尺度の項目分析,因子構造の検討,尺度の信頼性と妥当性の検討を行った。最後に研究3では,中学生の子どもをもつ父親と母親それぞれ約400名を対象にして,研究2と同じ中学生の子どもとの親子間葛藤とその原因帰属,親子間葛藤による心理的ストレス,葛藤解決行動と,それから親子間葛藤および解決行動の背景要因として考えられる親の精神的健康状態,本来感,ワーク・ファミリー・コンフリクト,夫婦関係(夫婦の愛情)の測定を目的としたオンライン調査を行い,それらの関連を検討した。
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