研究実績の概要 |
中年女性は,家事や子育ておよび高齢の親の世話や介護といった様々な状況に直面しストレスフルな生活を送っている。そうした日常的なストレッサーに対し,エゴ・レジリエンス(以下ER)は柔軟に自我を調整しうまく対処し適応できる能力であるとBlock&Block(1981)は定義している。そこで2023年度の研究では、中年女性のERが,人生計画性や仕事・趣味に打ち込む意識を介して精神的健康に及ぼす影響を40歳代,50歳代,60歳代別に検討することを目的とするWEB調査を実施した。分析対象者は 既婚者で子どもがいる中年女性のうち実親か義理親が存命である725名(40代285名,50代261名,60代179名)であった。分析項目:(1)エゴ・レジリエンス尺度14項目(畑・小野寺;2013)(2)人生キャリア計画性尺度9項目(坂柳,1999)(3)WHO-5 精神的健康状態表 1998年版)(Awata,S.2002)(4)仕事や趣味への打ち込む意識:「現在,打ち込んでやっているもの(仕事・趣味など)がありますか」。(5)子ども時代の実母との関係性:「母親は暖かく親しみやすかった」。いずれの項目も4段階評定で回答を求めた。分析の結果、ER得点および人生計画性得点は、ともに60歳代の得点が50歳代・40歳代より有意に高かった。次にERがどのように人生計画性と精神的健康に影響を与えているかを検討するために共分散構造分析モデルをたて検討した。その結果、暖かく母親が接してくれたことによりERは育まれ,そのERが人生計画をしっかり立て仕事や趣味などの活動に積極的に注力することで良好な精神的健康に影響を与えて行くと考えられる。しかし40歳代女性は人生計画に積極的にコミットはしているが,家事や育児に多忙な年代であるため精神的に安定した生活を送れていないのではないかと推察された。
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