研究課題/領域番号 |
19K03267
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
矢吹 理恵 東京都市大学, メディア情報学部, 准教授 (30453947)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際結婚 / 夫婦関係 / 家族療法 |
研究実績の概要 |
在米の日米国際結婚を1年以上継続している日本人妻10名に対して、夫婦間葛藤課題とその解決法略について1回2時間のフィールドワークの技法によるインタビューと観察により一人当たり2回以上実施することが当初の計画であった。しかし、2020年からの世界的なコロナ問題のため、渡米によるフィールドワーク調査が困難になった。そのため、オンライン・インタビューへの承諾を得られた協力者には実施をしたが、家族問題を家庭でのオンライン・インタビューで扱うことへの抵抗感がみられ、限られた人数へのデータ収集となった。また、オンラインでは観察を伴うフィールドワークは実施できなかった。昨年度から、調査の焦点を研究課題の一つである「国際離婚に直面する夫婦と子どもに必要な臨床心理学的支援の検討」に切り替えて研究を行ったところ、国際結婚家族を対象とした家族療法自体が存在していないことがわかった。そこで本年度は、1970年代からの家族療法の展開において家族成員間のマクロレベルの文化的差異がどのように扱われてきたかを検討した。1970年代の第一世代から現在の第三世代までの展開において、家族内の文化に比較的多く焦点をあてているのは、社会構成主義に基づく第二世代のナラティヴ・セラピーであった。そこで、第二世代のナラティヴ・セラピーから発展した第三世代のナラティヴ・アプローチに加え、第一世代のシステムズ・アプローチ、第二世代のソリューション・フォーカスト・セラピーとリフレクティング・プロセス、第三世代のオープンダイアログを学び、家族内に多言語・多文化が共存する国際結婚家族を対象とした家族療法の可能性を検討している。これに加えて、国際結婚夫婦の葛藤課題の一つである宗教問題について、人間の宗教性の心理学的発達を扱った専門書の編訳を行い、出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、多様性が高い集団である国際結婚家族の夫婦間葛藤解決過程を、協力者のライフストーリーの文脈により質的に明らかにすることを目的としているため、調査者と協力者がラポールを取りながらの対面によるインタビューと観察をデータ収集の基本としている。そのため、オンライン上のデータ収集では協力者の生活状況の把握までは踏み込むことは困難であった。また、コロナ問題により国家間移動の制限という、国際結婚家族にとっては家族関係維持にかかわる深刻な状況下で、オンラインであっても頻繁に調査協力を依頼するのは倫理的に妥当でないと判断した。家族問題を家庭でのオンライン・インタビューで扱うことへの協力者からの抵抗感も示された。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、最初の2年間で①夫婦関係を維持している夫婦、最後の1年間で②夫婦関係維持が困難・破綻した夫婦への調査を計画していた。コロナ問題の影響を鑑み、今後は①と②の調査期間の区別なく、協力者が見つかり次第依頼し、協力者の負担と倫理的問題がない範囲で、可能な限り対面での調査を実施する。また、課題の一つである国際結婚家族への有効な心理療法の検討のため、1)家族療法、システムズ・アプローチ、ブリーフ・セラピー等の家族の関係性を扱う心理療法と、2)感情焦点化療法(EFT)、加速化体験力動療法(AEDP)等の個人の感情に焦点を当てる心理療法の二つの流れを考査する。 さらに、これまでの日米国際結婚家族の研究から立ち上がってきた枠組みが、夫婦間で英語以外の第3言語が使用される国際結婚夫婦の場合ではどうなるかを、日本人が関わる英語圏以外の国際結婚夫婦へのインタビューにより検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年以降の現地調査がコロナ問題で実施できなかったことが理由である。今後は、可能な限りのフィールドワーク、インタビュー調査を実施しつつ、国際結婚家族への家族療法の検討に必要な研修費、渡航費、書籍代に充てる。
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