今後の研究の推進方策 |
本年度は、「非復元抽出形式での授業評価における学生が重要視する知見の寡占度・飽和度の計算」に関して、推定方法の改良を行う予定である。 尤度関数を用いてジップ分布の母数を推定するには,知見の順位と観察された回数を知る必要がある。しかしながら,質的研究のデータのほとんどが知見が観察された回数を収集できるが,その順位が未知である。豊田他(2019)と豊田他(2022)の方法では,知見が観察された回数を基づいて,1 から n まで順位を付け,ジップ分布の母数を推定した。しかし真の順位ではないため,母数の推定値にバイアスがあることが知られている (Pilgrim & Hills, 2021)。この問題に対して,Pilgrim & Hills (2021) は Approximate Bayesian computation(ABC) 法を用いて,ジップ分布の母数の推定方法を提案した。また,シミュレーションでABC法で推定された母数と真値の間のバイアスが最尤法より小さいことを示した。しかし,彼らの提案方法は一問一答形式のデータに適用できるが,一問複数回答形式のデータに適用できない。そのため,本研究は一問複数回答形式のデータにも適用できる ABC法を提案する予定である。 Pilgrim, C., & Hills, T. T. (2021). Bias in Zipf ’s law estimators. Scientific reports, 11 (1), 1-11.
|