研究課題/領域番号 |
19K03272
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
土田 宣明 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (40217328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / エラー / 実行機能 / 抑制機能 / 反応性制御 |
研究実績の概要 |
今年度は,これまで収集したデータの分析と,理論的な観点からの考察を実施した。具体的には,エラーをしてしまった後の対応(post-error adjustment)行動について,認知的コントロールの観点から,加齢効果を分析した。実験課題として,error-awareness taskに一部変更を加えたものを用いた。この実験ではgo/no-go taskを基本としつつ,エラーが起きた時にそのエラーに対応することを求める課題を設定した。対象は,若年成人50名,高齢者50名であった。実験の結果,高齢者では,突発的なエラーに対応する反応時間が,若年成人に比べ,相対的に長くなることが確認された。また,高齢者では,エラー時にどのような反応をしたかということが,エラーに対応する時間に強く影響することが確認された。以上の結果から,高齢者のエラー時の対応行動において,proactive controlからreactive controlへの変化が大きく影響していたことが推察された。理論的な考察は次の通りである。即時的な認知処理であるreactive controlから、準備的な認知処理であるproactive controlへの移行という概念(理論)を用いることで、日常生活でみられる現象の背景にある要因の一端がみえてくるものと思われた。例えば,高齢者の交通事故では、事故が重大化してしまうことがよく知られている。この要因には,実行機能の変化が関わっている可能性がある。若年者では,エラー時の対応を安定的に保持するproactive controlが反映している。しかし、高齢者では,対応を即時的に処理するreactive controlが反映し,エラーのインパクトがより強く影響して,エラーへの対応を遅らせているのではないかと思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家族の者が要介護状態となり,その対応に追われ,論文の公刊化が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
日本心理学会,日本理論心理学会を中心として発表した,これまでの成果をまとめて,学会誌に投稿する予定である。今年度中の公刊化を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の中,家族のものが要介護状態となり,研究のまとめ(論文の公刊化)が遅れ,令和4年度に繰り越して,予算を執行しなければならなくなったため。
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