研究課題/領域番号 |
19K03274
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
辻 弘美 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (80411453)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心の理論 / 実行機能 / 文化 / 注意 / 誤信念課題 / 内集団バイアス |
研究実績の概要 |
本研究は,心的表象能力の発達を象徴する「心の理論」獲得の基盤に,注意コントロールがどのようにかかわるか,また「心の理論」獲得は,多様な社会に生きるための社会性発達にいかに役立つかを明らかにするために,3つの具体的な検討を行った。 「心の理論」獲得の鍵となる実行機能発達に注意プロセスがもたらす役割検討では,アイトラッキングを通して得た視線停留データと実行機能課題のワーキングメモリ(数唱)との関係性が確認できた(発達心理学会32回大会発表)。 「心の理論」と他者への配慮の関係についての検討では次の知見が示唆された。心の理論は,分配ゲームを通して測定した「他者への配慮」傾向と直接的な関連は認められなかったが,「他者への配慮」は,親が評定する社会的行動指標とは関連していることが明らかとなった(国際心理学会2021発表予定)。 保育者が評定したコミュニケーションスキル発達に関しては,縦断的な検討から,初期の「心の理論」と実行機能の両者と関連がみられ,その中でも実行機能の発達がより強く関係していることが暫定的に示されている(成果発表準備中)。 文化的多様性理解のために,日本人を対象とした遡及的推論を行う実験に関しては,怒り表情は9歳,若年成人グループでは,内集団の方が外集団より正確に推論できたのに対し,喜び感情は,外集団の方が内集団より正確に推論できることが示された(日本心理学会84回大会 学術研究優秀発表賞)。多様性を学術的にマクロ視点からとらえるため,発達心理学会32回大会では,英国の共同研究者らと共同シンポジウムを企画し,オンライン上で,深い議論を行い学会内で公開する機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Covid-19感染拡大状況を鑑みて年度初めの時期から1ヶ月遅れではあったもの縦断研究データの収集ができており,これらは研究計画全体に影響を与えない範囲のずれである。1年目の視線解析データ分析を踏まえて,呈示刺激に修正を加えた上で,新たなデータ収集ができている。成果発表を予定していた学会が延期され翌年度開催になったが,それに向けての準備も整っている
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今後の研究の推進方策 |
縦断データ収集を継続し,分析結果を2022年度成果発表に向けて準備する。視線データの質的解析に重点をおき,探索的な分析を試みながら,質的な視座の軸を見出せるように取り組む。Covid-19パンデミック状況から,英国側のデータ収集が難しくなることを想定し,新たなオンライン指標の開拓を2020年中盤から進めてきた。そのオンライン指標を日本語版指標として確立させて,日英比較に用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表を予定していた学会はcovid-19パンデミックの影響でキャンセルされ,そのための旅費を使用しなかった。一方で,パンデミックの長期化を想定し,研究計画の変更を行う準備として,オンラインによるデータ収集の準備に一部の研究費を充てた。
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