研究実績の概要 |
心の理論の実装となる「他者に配慮したコミュニケーションスキル」に実行機能がどのようにつながるかの問いを明らかにする縦断研究成果を国際学会(LCICD, 2023)にて発表した。 具体的な成果として次の内容を報告した。3歳児クラスに在籍する幼児を3年間にわたり追跡し,実行機能としてワーキングメモリ,抑制,注意シフトの3要素の測定を行った。これらの実行機能要素の発達が後(5歳児クラス卒園時点)の他者に配慮したコミュニケーションスキルをどのように予測するかを,共分散構造分析の手法を用いて解析した。言葉の理解(PVT),ワーキングメモリ,抑制,注意シフトの潜在因子が5歳時点の「他者に配慮したコミュニケーションスキル」の62%のちらばりを説明するモデルが指示された。また実行機能の中では,抑制機能が有意な予測因子であることが明らかとなった。 心の理論スケール邦訳版(ToMI2-J)の開発にむけて,オンラインの全国調査を行った。2から12歳の子どもをもつ親を対象とした調査から①2,3歳②4,5,6歳③7,8,9歳④10、11、12歳の4グループにおいてそれぞれ100サンプルのデータを収集し分析した。項目反応分析モデルを用いて,当該スケールUS版のデータの発達の3段階(3因子モデル:初期項目(14項目),基盤(23項目),発展項目(23項目)),もしくは1因子モデルの可能性について検討した結果,日本幼児においても3因子モデルが最もデータのあてはまりが良いことが明らかになった。スケール難度の順序性についてはUS版の3段階とおおむね一致しているものの, US版項目の分類に比べて,邦訳版では3因子モデル:初期項目(16項目),基盤(9項目),発展項目(34項目)となり,概ね基盤項目が,初期項目に含まれるものと発展項目に含まれた項目がみられた。
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