これまでの研究において,養育者のメンタルヘルス不調と不適切な養育の関連,不適切な養育と子どもの心理社会的適応の関連が報告されている。このことから,養育者におけるメンタルヘルスの保持に関与する変数は養育行動を媒介して,子どもの心理社会的適応に寄与し得る。しかし,このような媒介モデルはあまり検証されていない。そこで,本研究は抑うつ症状の軽減に寄与する脱中心化を取り上げ,養育時における脱中心化を評価する自記式尺度を開発したうえで,肯定的・否定的養育を媒介する養育時の脱中心化と子どもの心理社会的適応の関連を横断的に検証することを目的とした。3-6歳の子ども(長子)をもつ母親1212名を対象としてインターネット調査を実施した。尺度作成においては,因子分析により,2下位尺度(順行項目群と逆転項目群)が得られ,いずれの下位尺度とも一定の信頼性と妥当性を備えることが確認された。媒介分析を行ったところ,養育時の脱中心化は肯定的と否定的養育を介して,子どもの心理社会的適応と関連していることが示された。具体的には,①養育時の脱中心化が強い母親では肯定的養育の頻度が高く,それを通じて子どもの心理社会的不適応の低さと関連すること,②養育時の脱中心化が強い母親では否定的養育の頻度が低く,それを通じて子どもの心理社会的不適応の高さと関連することが示された。本研究から,養育時の脱中心化の向上を図ることは効果的な養育支援になり得ることが示唆される。
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