研究課題/領域番号 |
19K03282
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金澤 忠博 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30214430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超低出生体重児 / 発達障害様症状 / 発症メカニズム / 周産期リスク因子 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
周産期医療の進歩により、出生体重1000g未満の超低出生体重(ELBW)児の生存率は飛躍的に向上したが、不注意や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)など、発達障害様の症状が多く見られることが報告されている。本研究では、平均年齢8歳のELBW児を対象に、発症率が通常の10倍近いASD様症状に注目し、その発症メカニズムを周産期のリスク因子との関係からエピジェネティックに明らかにすることを目的とした。検査項目として、保護者に依頼して、対人コミュニケーション質問紙、高機能自閉症スペクトラム・スクリーニング質問紙、ADHDスクリーニング検査-IV、Conners3、による対象児の発達障害や行動問題の有無に関して評価を依頼した。また、育児ストレスインデックス(PSI)により、育児ストレスの有無について調べた。さらに、保護者を通じて担任教師に依頼して、LDI-R、DuPaul学業評定尺度、Conners教師用質問紙により、学校での学習や行動問題の評価を行った。対象児には、WISC-Ⅳ知能検査、K-ABC 心理・教育アセスメントバッテリー、適応型言語能力検査(ATLAN)、アイトラッカーを用いた読み能力テスト、ADHDテストプログラム“もぐらーず”、Navon図形テストを実施した。周産期のリスク因子については、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、慢性肺疾患、壊死性腸炎、未熟児網膜症、人工呼吸器使用日数、酸素療法日数、多胎の有無、生殖補助医療の有無、などとの関係を調べ、発達障害様症状のエピジェネティックな発症メカニズムを探ることを目的とした。現時点で13ケースのデータが得られているが、新型コロナウイルスの感染拡大によりデータ収集も分析も大きく遅れている。Navon図形テストの結果、13名中2名のASD児には共通して弱い中枢性統合の特徴が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により大阪府に出された緊急事態宣言により、長期間、大学での研究活動が禁止されるなどにより、大学に研究協力者に来てもらってのデータ収集がはかどらず、データの分析に至らない状況が続いたため。
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今後の研究の推進方策 |
超低出生体重児の発達障害様症状の発症メカニズムにいついて、できるだけ多くのサンプルを集め、周産期リスク因子との関係に焦点を当てて、周産期前後のエピジェネティックな発症過程を究明する。そのために、これまでの研究で蓄積してきたデータと共に、発達障様症状の中でもASD様症状の発症メカニズムに注目し、発症に関わるリスク因子として、脳室内出血、慢性肺疾患、未熟児網膜症、多胎出産、生殖補助医療の影響に加えて、帝王切開の有無、黄疸の有無、アプガー得点に見られる出生時の児の状態との関係について調べる。ビタミンEの長期投与など症状の発現に抑制的に働く治療的因子の存在についても引き続き分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により全国に緊急事態宣言が出され、大阪大学も昨年度に引き続いて長期にわたり研究活動が停止され、予定していたデータワークができなかったため。これまでは大学の実験室に研究協力者を呼んで実施してきたが、新たな試みとして、研究協力者がアクセスしやすい協力病院の検査室をお借りしてデータ収集を行うことができるように交渉する。
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