パニック症/パニック障害を持つ成人に対しての、パニック焦点型短期力動的心理療法の効果に関する予備的研究を実施した。新型コロナウィルス感染症流行下であったため、研究方法の一部を変更し、オンラインでの心理療法の実施を視野に入れて、研究参加者募集を行い、2名の参加者を得た。しかし、2名ともに、本研究の心理療法の実施基準に該当せず、インテークの段階で心理療法の実施は見送ることとなった。 そのため、過去に実施したパニック焦点型短期力動的心理療法の録音記録の内容評定、面接プロセスの質的評価を、経験のある力動的な臨床心理士4名に依頼し、このデータを収集した。 くわえて、これまで実施し、24回のセッションをすべて終了した3事例について、内容をまとめ、日本精神分析学会第68回大会(横浜)にて発表を行った。さらに、この内容に測定した症状の変化についての数量的データを合わせて、心理臨床学研究誌に投稿した。 研究期間全体を通して、3例の事例を最後まで実施し、そのプロセスについての数量的、質的なデータを取得することができた。このデータについては、本邦の学会にて発表し、また雑誌等に投稿し公表することで、力動的心理療法に関する実証的な検討の取り組みの一端を示すことが出来たと考えられる。また、日本において北米で開発された短期的な力動的心理療法について実施した結果について、大きな改変や文化的な差異についての考慮はそれほど重要ではなく、むしろ短期間の積極的な介入によって日本においても、パニック症/障害に対して力動的心理療法が有効な介入となりうることを部分的に示すことが出来た点が成果であると考えられる。
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