研究課題/領域番号 |
19K03284
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
上手 由香 (小嶋由香) 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20445927)
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研究分担者 |
木谷 智子 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (70816230)
安部 主晃 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (80804319)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原爆 / 被爆二世・三世 / トラウマ / 平和 / ポジティブ心理学 / 許し / マインドフルネス / 児童養護施設 |
研究実績の概要 |
広島・長崎の原爆による被害が、被爆者のみでなくその子どもにどのような影響をもたらすかは、従来の研究では、主に遺伝的側面に終止しており、心理的影響 についてはほとんど目が向けられてこなかった。本研究では、原爆被爆体験の次世代への心理的影響の中でも、特にトラウマを乗り越えてきた力と心理学的観点 からの平和の捉え直しに着目し、得られた知見の平和教育への還元を目的に,以下の3点を検討するものである。 1)原爆被爆体験の次世代(二・三世)への心理社会的影響について、負の側面だけでなく、世代を超えてトラウマ体験を乗り越えてきた心理的働きに着目し、 ポジティブ心理学の観点から検討する。 2)平和に対する認識を測定する尺度を開発し、個人の平和の認識と状態に関連する要因を、親世代・個人のトラウマ体験の有無や性格特性などの観点から検討 する。3)心理学の知見を取り入れた心理学的平和教育プログラムを開発する。 上記の目的のもと、本研究では令和3年度に以下の研究を実施した。研究1については、被爆二世を対象としたインタビュー調査の結果をまとめ、分析考察を行った。また、研究2では、平和に対する認識という観点を再検討し、臨床心理学的な観点から心理的な平和の状態をマインドフルネス 、寛容性、セルフコンパッションの観点から検討することと方針を変更した。その方針に基づき、令和3年度は、寛容性(許し/Forgiveness)に関する日本語版尺度の開発およびオンラインによる調査を行なった。研究3 として、心理学的平和教育プログラムの開発を目的とし、マインドフルネスに着目したプログラムの開発を行い、児童養護施設入所児童生徒に対する介入プログラムを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、当初予定していた研究1における被爆二世・三世を対象としたインタビュー調査は新たなデータの取得を見送り、すでに調査が終了していた面接調査の分析を行なった。また、平和に対する認識に関して、臨床心理学的観点から再検討を行い、研究2および3の内容を一部変更した。研究2では、心理的な平和に関する一つの要素として、寛容性に関する日本語版尺度の開発を行うこととなり、Enright Forgiveness Inventory (Subkoviak et al., 1995)を翻訳し、大学生を対象としたオンライン調査を実施した。研究3における、心理学的平和教育プログラムの構築に関しては、マインドフルネスに着目し 、児童養護施設の入所児童生徒に対する介入プログラムを実巣することができた。 令和3年度は特に、研究2と3の遂行が中心となり、研究1の新たなデータの収集が見送られることとなったため、研究の進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も新型コロナウィルス感染拡大に伴い、インタビュー調査の実施は困難であることが見込まれるため、研究1については、新たな調査が困難な場合は、すでに実施済みのデータの分析及び論文作成を行うこととする。また、オンライン調査による被爆二世・三世を対象とした質問紙調査を実施する予定である。 研究2の寛容性の日本語版尺度開発については、令和3年度に大学生を対象としたオンライン調査を実施した。日本語版尺度の妥当性および信頼性の検討のため、令和4年度は対象を拡大し、成人を対象とした調査を実施する予定である。これらの調査結果を分析し、投稿論文を作成する予定である。 研究3の心理学的平和プログラムの構築については、引き続き児童養護施設児童生徒を対象としたマインドフルネスのプログラムを実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究2では日本語版寛容性尺度の開発を行なっており、令和3年度に引き続き令和4年度もオンライン調査を行い、尺度の妥当性の検討を実施する予定である。そのため、オンライン調査にかかる費用を次年度に使用するため、次年度使用額が生じた。
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