研究課題
本研究は,小中学校における子どものメンタルヘルスの問題を予防することを目的とした介入の効果研究である。とくにメンタルヘルスの問題における保護要因は“子どもが困難に直面したとしても心身の健康を保つための要因”である。学校におけるメンタルヘルス研究の“予防効果”は,治療的効果にとどまらず,“子どもが保護要因を習得・向上し,心身の健康を保つ術を身につけること”を目標としている。また,学校におけるメンタルヘルス研究の短期的な介入研究はあるものの,小中学校の期間に長期的に介入を“継続した”,予防プログラムの効果検討をしている研究は少ない。そこで本研究は,症状(ストレス反応)の治療的効果に加えて,保護要因(レジリエンス)の習得・向上を目的とした介入効果の検証を行い,さらにその効果を小学校から中学校を通して,効果を測定する。本年度は,当初の研究計画通り介入研究を実施した。A県内の公立B小学校に通う5年生,全6回のプログラムに参加した計24名(男子12名,女子12名)を対象とした。授業を活用して,認知行動的な介入技法からなるプログラムを実施した。Linear Mixed Modelによる解析を行い,ストレス反応の不安・抑うつ,不機嫌・怒り,無気力において,時期(介入前,介入後,Follow-up)の測定値に有意な変化がみられた(p< .01)。教師評定用レジリエンス尺度についても解析した結果,介入前とFollow-up測定時に有意な得点の変化がみられ(p< .01),レジリエンス得点が上昇する結果となった。児童用レジリエンス尺度のソーシャルサポートにおいて,介入前とFollow-up測定時に有意な得点の変化みられ(p< .01),得点が上昇する結果となった。その他の下位尺度に有意な得点の変化はみられなかった。来年度も引き続き,小中学生を含めた介入データを収集し,介入の有効性を検証する。
2: おおむね順調に進展している
概ね順調に進行している。当初計画した小学生児童を対象とした介入を実施することができている。しかしながら,当初計画したよりも対象者数が少ないため,研究期間の2年目はより多くの対象者を確保することを目標として,関係機関との連携を行なっている。
2年目にあたる年度も継続して当初に計画通り,小学生を対象とした介入研究を進めていく。目標としていた対象者数を確保し,十分な知見を蓄積し公表できると考えている。また,本研究の目的の1つである長期的な介入効果の検討についても,小学生児童の対象者数を着実に増やすことを念頭に連携している学校との調整を行なっている。そして,介入の効果検証を本研究の終了期間である令和3年度まで継続して実施する予定である。これらの方策により,当初計画した研究を順調に進めていくことができると考えている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
認知行動療法研究
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