本研究は,小中学校における子どものメンタルヘルスの問題を予防することを目的とした臨床心理学研究である。とくにメンタルヘルスの問題における保護要因は“子どもが困難に直面したとしても心身の健康を保つための要因”である。学校におけるメンタルヘルス研究の“予防効果”は,治療的効果にとどまらず,“子どもが保護要因を習得・向上し,心身の健康を保つ術を身につけること”を目標としている。また,学校におけるメンタルヘルス研究の短期的な介入研究はあるものの,小中学校の期間に長期的に介入を“継続した”,予防プログラムの効果検討をしている研究は少ない。そこで本研究は,症状(ストレス反応)の治療的効果に加えて,保護要因(とくにレジリエンス)の習得・向上を目的とした介入効果の検証を行う。 2022年度は,当初の研究計画通り介入研究の対象となる2学級(およそ60名)のデータを蓄積した。介入研究は,認知行動的な介入技法によるプログラムを実施した。Linear Mixed Modelによる解析を行い,抑うつ症状やストレス反応の軽減,そしてレジリエンスの向上といった効果がみられた。 また,2022年には本研究費によって実施した調査研究を国際学術誌(査読付き)に公表した。この研究は,小学生を対象に2年間6時点のデータ収集を行なった縦断研究である。抑うつ感に与える認知行動的要因についてRandom Intercept Cross-Lagged Panel Modeling (RI-CLPM)による解析を行い個人内における縦断的な変化を検討した。結果から児童の抑うつ感にネガティブ自動思考,ポジティブ自動思考の影響が強いことが示唆された。
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