本研究では、10代~30代の青年期・成人前期に家族介護をしている(もしくは経験した)「若年ケアラー」を対象とし、若者ケアラーとそれ以外の世代のケアラーの実態を明らかにすること、そして若年で介護をする経験が人生にどのような影響を与えるのかを生涯発達の視点から明らかにすることの2点を目的としており、本研究課題の最終年度である2022年度は結果公表を中心に行った。ヤングケアラーや若者ケアラーに関する論文を執筆した。また社会に広くヤングケラーや若者ケアラーを周知するため、教育委員会からの依頼に応じ、中学校、高等学校、特別支援学校の教員を中心に、学校現場におけるケアラー支援について、本研究課題の結果を基に講演を行った。 また、研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、10代~60代のケアラー2057名を対象としたWeb調査で明らかになったことは、介護やケア経験による人生への影響について、「影響あり」は1483名(72.1%)、「影響なし」は574名(27.9%)であり、ケアラーにとって、ケア経験は人生に何らかの影響を及ぼす可能性が高いということであった。年代に着目すると、介護経験が人生に影響を及ぼしていると認知しているのは、50代・60代で有意に多く、反対に10代から30代までの若年層は、影響がないと認知している人が有意に多かった。「影響あり」と回答した対象者だけに着目すると、ケアラー経験が人生に肯定的な影響を及ぼしていると考えるのは10代・20代で有意に多かった。否定・肯定の両面があると回答したのは50代が有意に多く10代・20代が有意に少ないことが明らかになった。ここから、ケアラーとしての経験により変化があったと感じている10代・20代の若年層にとっては、ケアすることは人生に肯定的な影響を及ぼしている可能性が示唆されたが、否定的側面も含め、今後も検討する必要がある。
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