研究実績の概要 |
2022年度は、2022年1月の調査(以下、調査1)に継続し、2022年7月に小中学生1,107名を対象とした調査(以下、調査2)を行った。 まず、認知的要因がゲーム依存傾向に及ぼす影響について検討を行った。その結果、すべての年齢に共通する要因として、「セルフコントロールに対する自信の欠如」と「ゲームのストレス低減に対する有効性認知」が依存傾向を促進することが示された。また、小学校低学年では「ゲーム内の完全主義的思考」、小学校高学年では「ゲーム内の友人関係不安」、中学生では「ゲーム内の報酬への過大評価」が、それぞれ依存傾向を促進することが示された。 次に、ゲームへの依存傾向の経時的変化について、IGDS-J(鷲見ら,2018)を用いて検討した。その結果、小学校2年生(調査1では小学校1年生)、中学校1年生(調査1では小学校6年生)において、調査2の得点が有意に低いことが明らかになった。一方で、中学校3年生(調査1では中学校2年生)において、調査2の得点が有意に高いことが明らかになった。 さらに、本研究の結果をもとに作成したリーフレットを調査に協力が得られた学校に所属する全児童生徒を対象に配布を行った。また、上述の認知的要因をターゲットとした予防プログラムの授業を作成し、小学校5年生、中学校2年生を対象に実施した。 本研究では、インターネット依存の中でもGaming Disorder(ゲーム障害)に焦点を当て研究を実施した。本研究の結果より、(1)運動習慣や睡眠などの生活習慣がゲーム依存傾向に寄与すること、(2)依存を促進する認知的要因として、全年齢に共通の要因と、発達段階特有の要因があることが示唆された。また、(3)リーフレットを用いた啓発や授業実践の試みを行ったが、効果検討は、より幅広い対象に実施し、より多くの知見を含めて行う必要がある。
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