最終年度となった2022年度は、研究開始時から研究協定を交わしている「情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑いのある少年」を処遇する支援教育課程Ⅱのある少年院において、教官への研修(ペアレント・トレーニング支援者版)、保護者に対する保護者講習会を行った。さらに、法務省矯正局少年矯正課の協力を得て全国の少年院から希望を募り、新たに6施設において職員研修を実施した。 (1)2022年度中に職員研修を実施した8施設において、研修の前後に質問紙調査、研修終了後に満足度アンケートを実施し、研修の効果を検討した(分析対象62名)。研修前と研修後を比較した結果、教育に関する効力感に有意な上昇、特別支援教育に対する負担感の「やりがいのなさ」に有意な減少、ストレスのうち「不安感」に有意な減少が認められた。研修後のアンケートでは、「研修のわかりやすさ」「参考になった」「また参加したい」といった項目が高い評価であった。自由記述では「役に立ったこと」「詳しく知りたいこと」「今後の研修に対する意見や要望」といった情報を収集できた。 (2)保護者講習会を実施したのは、2施設であった。いずれも、保護者の参加可能性を考慮して1回で完結する内容とし、ペアレント・トレーニングに用いる「行動とは何か」「行動の見方・分析」「行動を変える関わり」といった要素を取り入れた。参加前後の評価はできなかったが、終了直後にアンケートを実施した。その結果、保護者の満足度は高く、「行動が起きるしくみ」や「行動は変えることができる」といった話は保護者に伝わり参考になったと考えられ、ペアレント・トレーニングの基本的な考え方や手法は少年在院者の保護者にも適用できると示唆された。
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