研究課題
本研究では、成人期の注意・欠如多動症(ADHD)患者を対象にした集団認知行動療法の実施に必要な臨床スキルをセラピストに身につけてもらうための研修体制の構築を目指した。対人援助職 42名に講義およびロールプレイを含む集合型研修およびその後のスーパービジョン(SV)という二段階で実施した。主な保有資格は、臨床心理士・公認心理師21名(48.84%)、医師5名(11.63%)であった。スーパービジョンの効果指標として、集団認知行動療法治療者評価尺度(G-CTS)を用いた。集合型研修では、注意欠如・多動症の認知行動療法に関する講義に対する満足度が高く、グループのロールプレイには臨場感や時間配分の点において限界がみられた。SVでは、2回目のSV実施後のG-CTSのすべての項目における得点は、1回目のSV前の得点と比較して高かった。特に「アジェンダの設定」、「変化に向けた方略」、「ホームワーク」という基礎構造ともいえるところが変容していた。「フィードバック」には、セラピストがある参加者と1:1のやりとりに終始せずグループ全体に話題を広げるなどの集団に独特な部分も含まれ、初心者には難しく感じられたようであった。SVによってこの点が大きく改善されていた。また、他の疾患と比較すると、ADHD患者への理解と行動課題の設定に焦点づけ、臨床スキルのみならず組織内での体制づくりや連携などの課題もカバーしながらコンサルテーションのような要素を持たせて、総合的に実施する必要のあることが明らかになった。認知行動療法の研修はこれまでもうつ病をはじめとした各疾患別に実施されてきたが、成人期の注意欠如・多動症の患者集団を対象にしたものは初めての試みであった。研修内容をブラッシュアップして普及していくことで、注意欠如・多動症の臨床を担う専門家が増え、注意欠如・多動症患者の受け皿が拡大するであろう。
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