研究課題
目的:Early Start Denver Model (ESDM)は生後12ヶ月から48~60ヶ月までの発達早期の幼児を対象とし、対人相互の結びつきに焦点を当てることを特徴とし、効果が検証されている自閉スペクトラム症(ASD)の超早期介入法であるが、一人の児に要する個人セッションの時間及び頻度の多さから、支援や介入を行える機関や療育者数が限られる日本の現状では同様の枠組みを提供することが難しい現状があり、多くのASD児にESDMによる介入を提供できていないのが現状である。このことから本研究は日本の現状に合わせて提供可能なプロトタイプを作成し効果検証を行うこと、ESDM治療者の地域レベルでの人材育成を促進することを目的とするものである。研究実績:①ESDMの人材育成-2019年3月に行ったESDMの紹介講演で本介入法に興味を示した臨床心理士1名を、7月に札幌市で開催されたESDMイントロダクションワークショップに派遣した。②ESDMの実施とプロトタイプの作成-ESDMへのリクルートを行うために、2019年度中に弘前大学医学部附属病院を受診した4歳以下の乳幼児71名に対して自閉症評価としてAutism Diagnostic Observation Schedule 第2版(ADOS-2)、SRS-2対人応答性尺度(SRS-2)、適応行動尺度としてVineland-II適応行動尺度(Vineland-II)、知的レベル評価としてWPPSI-IIIまたは田中ビネーVを実施し、観察・診断を行った。ESDMの実施は、2018年度からの継続1名、2019年度7月から1名、2019年度9月から1名の計3名の幼児に対して週1回1時間の介入を行っている。
3: やや遅れている
現在ESDMは全ケース医療機関にて行っている。ESDM実施中の幼児については今般の新型コロナウイルス流行のため、感染リスクを減らす目的で来所の中断が継続している状況である。同様に新規のケースのリクルートも進められていない。またセラピスト資格取得のためには実際のESDM実施時のスキルに関するチェック項目をクリアするステップを数段階経る事が必要であるため、ESDM実施の中断に伴ってステップの進行も中断せざるを得ない状況となっている。新たなセラピスト人材の増員も、佐賀市で開催予定だったESDMワークショップ延期となったため滞っている状態である。
新型コロナウイルスが収束し、医療機関における感染リスクが無くなった時点でESDMによる介入およびセラピスト資格取得ステップの進行を再開する。引き続きASD疑いの4歳以下の乳幼児に対して各種検査を実施して状態を把握し、新規ケースのリクルートを行い、同意が得られた乳幼児に対して介入を開始する。地域の保健師、療育関係者、臨床心理士などに対してESDMの紹介を行い、ESDM認定セラピスト資格取得を希望する者をESDMアドバンスワークショップに派遣し、セラピストの増員を図る。
2020年3月に佐賀市にて4日間の日程で開催予定だったESDMワークショップが新型コロナウイルスの流行のために年度内に実施することが不可能となり、それに伴う研修費、出張費などの支出が無くなった。また感染リスク防止のためにESDMを中断していることで、実施時に必要となる消耗品の購入に伴う支出が生じなくなっている。翌年度はESDMセラピスト資格取得希望者を、ESDMワークショップに派遣する。ESDM再開に伴い、消耗品の購入を行う、リクルートするために行う各種検査の検査用紙、検査用具の購入を行う。
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