研究課題/領域番号 |
19K03308
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中川 彰子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 教授 (70253424)
|
研究分担者 |
清水 栄司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00292699)
加藤 奈子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (30837042)
中尾 智博 九州大学, 大学病院, 講師 (50423554)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 強迫症 / 認知行動療法 / 遠隔スーパービジョン |
研究実績の概要 |
今年度は当初より、首都圏に緊急事態宣言が発せられ、新型コロナウイルス感染症を懸念するために強迫症の患者が認知行動療法のカウンセリング(1回50分程度)を対面で希望する頻度が減り、オンラインカウンセリングが行われる、ごく限られた専門機関の患者に限られることとなった。 本研究に参加した対象治療者(スーパーバイジー)は13名(男性6名、女性7名)で、認知行動療法の経験年数は平均6.2年、強迫症の認知行動療法の経験症例は平均5.4例であった。コロナ禍の影響もあり、途中で感染を恐れて受診を回避したり、仕事の都合で通院ができなくなった等ドロップアウトとなった患者が2名生じた。今年度予定セッション数である16回のセッションを終了した対象者は7名で、対象者に自分のおこなう強迫症の認知行動療法に対する自信について5件法で自己評価を求めたところ、治療前が平均2.7点、16回終了後が平均3.5点、平均で0.8点上がっていた。対象症例の強迫症のメインアウトカムであるYale-Brown Obsessive-Compulsive Scale の重症度の変化については、総得点が治療前平均22.4点、16回終了後が平均13.8点へと38.4%の改善が認められ,重症度は中等度から軽度となった。これは、一般的に有効とされる改善率の基準値以上に達していた。 症例数がまだ少ないが、対象者のSVを受けた感想として記述式のアンケートもおこなったところ、近年増加している自閉スペクトラム症を併存する症例に対する治療の工夫や技法の選択に関する助言や指導が有用であったという意見が多く見られ、来年度でさらに症例を増やし、今後のスーパービジョンやマニュアルの書籍化の際に役立てたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での受診を避けるという強迫症の症状による影響があり、当初の予定のリクルートのペースにはまだ至っていない。さらに、予定していた国際学会での発表や海外の研究者との交流の機会がコロナ禍で不可能となり、予定していた予算通りに研究費が使用できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
オンラインの国内学会等で患者のリクルートを行いながら、対象治療者の担当する患者数を増加させ、さらに対象治療者にSVの効果に関する評価、使用しているマニュアルに対する評価をおこなってもらい、今後のSVの参考にする。さらに経験の浅い治療者のために、治療でつまずきやすい点などを詳述し、さらにモデル症例提示も含めた現在用いているマニュアルの書籍化をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、強迫症の患者の認知行動療法を求めての受診が大きく減少し、遠隔によるスーパービジョンを求める治療者の数が減少したため。 今後は、ホームページの更新や学会の研修会等を利用して本研究の宣伝に尽力し、対象治療者の数をできるだけ増やす。
次年度使用額については、まだ上記感染拡大は収束が見込めないため、国際学会での発表や意見交換は実現可能性が低い。そのため、リクルートで行う研修会等の講義の際に、実際のセッションでの患者への対応の方法などについてロールプレイを撮影した動画を用いた教材の作成費に充てることを計画している。
|