研究課題/領域番号 |
19K03308
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中川 彰子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 教授 (70253424)
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研究分担者 |
清水 栄司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00292699)
加藤 奈子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (30837042)
中尾 智博 九州大学, 大学病院, 教授 (50423554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 強迫症 / 認知行動療法 / 遠隔スーパービジョン |
研究実績の概要 |
本研究はわが国で圧倒的に不足している強迫症に対する認知行動療法を実施できる治療者を養成し、少しでも多くのこの難治な疾患に苦しむ患者とその家族に適切な治療を提供すること、および本研究を通して用いた申請者らの作成したマニュアルを改良させ、書籍化を行うことを目的とした。 コロナ禍ではあったが、オンラインで行われた研修会などの参加者や本研究への参加募集の情報で集まった治療者の参加がみられた。研究実施に当たっては、対面の研修会への参加者と面談を行い、本研究の対象者(治療者)としてエントリーできるかどうかを検討を行う予定であったが、オンラインになったので、このことはまだ果たせなかった。しかし、その他の手段によって本研究の参加者として遠隔SVを受けた治療者は、ほとんどが強迫症の患者に対して認知行動療法を実施、終了できてきており、この疾患への認知行動療法をおこなうことへの自信をつけることができている。 本研究に参加した対象治療者(スーパーバイジー)は現在26名(男性13名、女性13名)で、認知行動療法の経験年数は平均6.3年、強迫症の認知行動療法の経験症例は平均3.9例であ った。対象者に自分のおこなう強迫症の認知行動療法に対する自信について5件法(1:全く自信がない~5:自信がとてもある)で自己評価を求めたところ、治療前が平均2.6点、16回終了後が平均3.8点で平均で1.2点上がっていた。対象症例の強迫症のメインアウトカムであるYale-Brown Obsessive-Compulsive Scale の重症度の変化については、16回終了できた15名では、総得点が治療前平均23.5点、16回終了後が平均15.6点へと33.6%の改善が認められ、重症度は中等度から軽度に改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究対象者(スーパーバイジー)の予定人数は20名であったが、これは、スーパーバイザーと直接面識のない治療者を対面の研修会で参加を募り、遠隔でスーパーバイズをおこなうという方法によるものであった。しかし、コロナ禍の影響もあり、密を避けるために対面の研修会を開くことができず、バイジーとバイザーがなんらかのつながりのあるという枠組みで行われたものが多かった。これまでのところ、26名の参加者を集めたが、途中で感染を恐れて受診を回避したり、仕事の都合で通院ができなくなった等ドロップアウトとなった患者が4名生じたので、22名と数の上では上記の予定の参加者を上回っているが、スーパーバイザーとバイジーが面識のなかったいう当初の予定通りの対象者は4名で、20名集めることはできていない。このことの影響も考慮すべきかどうか検討する必要もある。 上記のような理由で、予定通りの対面での強迫症の認知行動療法の研修会を開き、遠隔スーパービジョンをおこなってデータに加えることが必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
わが国の強迫症の認知行動療法の普及は、認知行動療法の先進国の諸外国に比べ、大きく後れを取っている。これを解消するために、全国規模での強迫症の認知行動療法の研修会を開き、そこで対象者となるスーパーバイジーを募り、遠隔でのスーパービジョンを行い、これまでの参加者と合わせて、治療上初心者の陥りやすい点やそれに対応する方法(スーパービジョンの在り方)などを洗練させる必要がある。 本研究では、それぞれの研究対象者にスーパービジョンに対するアンケートや治療者自身の変化についてのアンケート、マニュアルに対しての要望などをフィードバックしてもらっているが、現在治療中および新しく組み入れられる治療者の治療終了後、上記アンケート等の結果をもとに、現行のマニュアルのより有用な書籍化をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、対面のワークショップを行うことを予定していたが、コロナ禍が予想外に長引いて、密を避けるために実施できなかった。その費用が未使用となり、次年度に回すことになった。
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