研究課題
認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)は、患者の認知や行動をより適応的なものへと変容させていくことを援助する治療法であり、うつ病、社交不安症等の不安症、および強迫症などに対して薬物療法に劣らない治療効果を発揮することがわかっている。しかしながら、本邦の医療現場において、CBTを希望する患者全員に提供できる医療機関や治療者の数は依然として限られている。そこで、CBTが奏効する可能性が高いと判断される患者に優先的にCBTを提供していくために、あらかじめ治療反応性を予測する手法を確立することを目的とする。本年度は、症状評価、MRI検査、認知機能検査の実施体制を整備した後、認知行動療法を受ける予定の不安症7名、強迫症7名、健常対照者18名をリクルートし、症状評価、MRI検査、認知機能検査を実施した。認知行動療法を完遂した患者には、治療後の症状評価を行った。また、認知行動療法の治療効果予測の候補因子の探索のため、認知機能検査を用いて社交不安症と健常者を比較し、中枢性統合と視覚的探索の低下すること、および、強迫症の治療効果を予測因子として、自閉スペクトラム傾向の下位尺度であるコミュニケーションとウェクスラー成人知能検査(WAIS-III)の語音整列が、認知行動療法に対する治療反応性を低下させる可能性があることを、それぞれ英文誌で発表した。また、国際的多施設共同研究により、強迫症の皮質と脳白質微細構造の変化と臨床的特徴との関連性や、大脳皮質厚、表面積、皮質下容積による分類性能を報告した。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、認知行動療法を受ける不安症と強迫症患者のリクルートが遅れたため。
患者と健常対照者のリクルートと症状評価、MRI検査、認知機能検査を引き続き行うとともに、前年度までに得られた各種MRI画像と心理指標と治療効果との関連性を調べるためのデータ整備を行うとともに、集積したデータを用いて解析を進める。
研究協力謝金と心理検査者謝金の低減が可能であったため、次年度使用額が生じた。画像解析に用いるワークステーション、特任研究員の人件費、研究成果を学会で発表するための旅費と学会登録費、英文校閲費、論文投稿料として使用する予定である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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