研究課題/領域番号 |
19K03312
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
幸田 るみ子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30384499)
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研究分担者 |
笠井 仁 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80194702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん患者遺族 / ミーニング・センタード・サイコセラピー / 悲嘆 |
研究実績の概要 |
本研究は、米国を中心に進行がん患者の心理状態の改善に有効性が検証されている、生きる意味に焦点を当てたミーニング・センタード・サイコセラピー(以下MCP)について、がんで家族を亡くした遺族の死別後悲嘆に対する有効性を検証することを目的としている。死別後の悲嘆は、その国独自の文化、死生観、価値観などが大きく影響するため、米国で有効なMCPが果たして日本人にも有効であるかどうか、検証する必要がある。また近年、MCPをベースに悲嘆に対する効果を検討したミーニング・センタード・グリーフ・サイコセラピー(以下MCGP)が示されているが、その有効性の検討は十分になされていない。そこで本研究は、がん患者遺族にMCPを実施した過程を質的に分析し、日本人にとってMCPのプロセスがどの様に受け止められ、どの様な反応形成に至るか検討を行うものである。 昨年度から対象者を増やし、MCP実施前後の4つの評価尺度(①複雑性悲嘆質問票日本語(ICG-19)②抑うつ尺度(CES-D)③精神健康調査票(GHQ-12)④心的外傷後成長短縮版(PTG))の変化を分析した。また、MCPの内容を修正版グランデット・セオリー・アプローチ(M-GTA)で質的に分析した上で、概念図をブラッシュアップし、MCPの効果について質的に分析した。4つの評価尺度のうち、ICG-19、CES-D、PTGはMCP実施前後で有意に改善した。 また、対象者の後悔、罪悪感、大切な家族を亡くした喪失感等は、MCPを通して人生の意味の再発見の過程、故人との関係についての視野の拡大、故人との関係性の連続性への気づき等を通して軽減していった。 この結果は、第34回日本サイコオンコロジー学会総会で発表し、論文にまとめてPalliative & Supportive Care誌に投稿し査読結果待ちである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、研究参加者の登録取り消しや実施延期があり、MCPの実施が滞っていた。対象者が高齢者であり医療機関での実施であることが影響している。そのため、概念図の作成や研究内容をまとめるのに時間を要した。 また、症例発表予定の学会が、2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響で対面実施が中止となったため、発表が2022年度になった。(今年度は現時点で実施予定である。)
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今後の研究の推進方策 |
現在「Palliative & Supportive Care誌」に投稿し査読中である。査読結果を踏まえ、受理に向け対応していく。 今年度日本心理臨床学会41回大会で症例報告を行う予定であり、発表に向けて準備を行っていく。 適切な対象者を増やすことができれば、対象者を増やし内容を精査することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年度学会がオンライン開催となり、発表を予定していた事例研究が中止、参加予定していたワークショップも中止となったため、次年度使用額が生じた。次年度に2つの関連学会への参加を予定しており、その参加費、交通費、宿泊費を計上する。 また、論文推敲に当たり、関連図書の購入、論文の追加別刷り費用等を計上する予定である。
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