研究課題/領域番号 |
19K03314
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
井村 修 奈良大学, 社会学部, 教授 (20176506)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 疲労感 / 筋強直性ジストロフィータイプ1 / 生体情報端末 |
研究実績の概要 |
【目的】筋強直性ジストロフィータイプ1患者(以下DM1と略す)の疲労感の解明を、生体情報端末や心理的評価尺度を使用して行うことを目的とする。 【方法】10名の研究参加者を得て、活動量や睡眠時間、体重をセルフモニタリングしながら、研究者の動機づけのもとに健康の増進を試みた。 【結果】HbA1c(血糖値)、疲労感(MFI-20)、昼間の眠気(JESS)、アパシー傾向(やる気スコア)、抑うつ傾向(PHQ-9)が測定された。介入前(T1)とフォローアップ時(T4)を比較した。体重の平均値はT1で69.1kg、T4で68.7kgであった。HbA1cの平均はT1とT4いずれも5.8であり変化は認められなかった。疲労感の平均値は、T1で71.8からT4で65.6に減少していたが、疲労感は依然高い水準となっていた。JESSの平均値は、T1で10.0でT4で9.7であり変化がわずかであったが高い水準であった。やる気スコアとPHQ-9は、それぞれT1で20.8とT4で17.8、T1で10.4とT4が3と減少した。 【考察】疲労感とアパシー傾向、抑うつ傾向で低下が認められた。生体情報端末を利用した健康増進プログラムは、体重やHbA1cのような生理的指標の変化については、十分な成果を得るには課題が残った。しかし、本プログラムにより、健康に関心を向けDM1患者の主体性・能動性を高める効果があるものと考えられる。 【研究計画の修正】新型コロナウイルスのため、当初の研究計画の推進が困難になった。そこで一般の健常者を対象に疲労感のWEB調査を行った。測定尺度はMFI-20、FSS(Fatigue Severity Scale)、PHQ-9を実施した。692名のデータをIRT(段階反応モデル)により分析したところ、FSSの方がMFI-20より信頼性が高いことが示唆された。また疲労感と抑うつには有意な相関が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大のため、筋強直性ジストロフィー(DM1)を対象とした健康改善プログラムの実施は困難となっている。やや感染者数の減少や軽症化の傾向が見られるものの、研究者の医療機関への立ち入りが制限されている。研究期間を1年間延長したが、初年度のように研究協力者を得られるか不明である。したがって今後、研究計画の修正も求められるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
MFI-20は日本語に翻訳され17年になるが、尺度の信頼性・妥当性は十分に検討されているとは言いがたい。そこで2020年度から2021年度かけて、一般の健常者を対象として疲労感のWEB調査を実施し、尺度の信頼性・妥当性の再検討を行った。692名のデータをIRT(段階反応モデル)により分析したところ、FSSの方がMFI-20より信頼性が高いことが示唆された。また疲労感と抑うつには有意な相関が見られた。健常者のMFI-20の平均値は55.7であり、諸外国での研究より10~20得点が高い。これは真の疲労感の差異を反映しているのか、反応バイアスの結果なのか明確でない。よってDM1患者の疲労感を適切に測定するには、MFI-20およびFSSの尺度としての有効性を検討する必要がある。2022年度の研究計画としては、当初の生体情報端末による健康改善プログラムの実施が可能であればデータを追加する。また当初の研究計画の遂行が困難になった場合は、質問紙による疲労感のアンケート調査に切り替えることも想定している。その際は、筋強直性ジストロフィー患者の登録制度や、患者家族会の協力を依頼する予定である。使用尺度はMFI-20、FSS、PHQ-9等である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初3年間の研究計画であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため2020年度からDM1患者を対象とした調査が困難になった。2021年度も同様であったため、研究期間の1年延長を申請した。
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