【目的】2021年度の研究目的は,嘔吐反射を伴う歯科恐怖症を抱える者を対象として,従来の介入プロトコルであるエクスポージャーを実施する前にWells(1990)を参考に作成した注意訓練を実施する介入プログラムの効果をランダム化比較試験によって検証することであった。 【方法】Modified Dental Anxiety Scale日本語版(以下,MDAS-J:古川・穂坂,2010)の得点が19点を超え,歯科治療に対する恐怖によって嘔吐反射が生じる11名の対象者を介入群(5名)と対照群(待機群:6名)にランダムに振り分け,介入群に割り振られた対象者は,従来の介入プロトコルであるエクスポージャーを実施する前にWells(1990)を参考に作成した注意訓練を実施する介入プログラム(全8セッション)への参加を求めた。 【結果】介入期間終了後において,介入群と対照群のMDAS-Jの得点を比較した結果,有意な群間差が検出された(P=0.008)。また,介入群5名のうち4名に歯科治療のためのデンタルミラーの口腔内挿入による嘔吐反射の消失が認められ(消失率=80%),対照群6名のうち嘔吐反射の消失が認められた者は1名であった(消失率=16.7%)。したがって,本研究で実施した介入プログラムは,歯科治療に対する恐怖ならびに嘔吐反射の軽減に有効であることが明らかにされた。 【結論】2019年度から2021年度に実施した研究の成果から,嘔吐反射を伴う歯科恐怖症に対して,従来の介入プロトコルに注意訓練を加えた介入プログラムが有効であることが明らかにされた。
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