研究課題
慢性疼痛を患っている人々は、疼痛によるストレスに日々曝されています(慢性ストレス状況)。本研究の目的は、慢性疼痛患者が抱えている慢性ストレスを低下させ、その結果、疼痛の主観的症状の緩和することです。そのために、本研究では、ストレスに対するコーピング(対処行動)の柔軟性に焦点を当てました。 同一のストレスを経験しても、心理・身体的ストレス反応の程度や表れ方は個人によって異なり、その個人差を説明する主要な概念のひとつがコーピングです。コーピングには複数の方略があります。それぞれの方略の効果は、個人が置かれている状況などによって、異なることが知られており、特定の方略を用いることが、必ずしもストレスを緩和(悪化)するわけではありません。コーピングの柔軟性は、「ストレス状況に応じて、コーピング方略を柔軟に用いる(変化させる)能力」を意味します。今年度の研究は、この研究の最終年度に当たります。本研究の目的を達成するために、以下の3つのアプローチから研究を実施しています。①実験アプローチ:慢性疼痛を患っている人々を対象に、疼痛に起因した慢性ストレス及び疼痛の主観的症状が、柔軟なコーピングによって緩和するという仮説を検証しました。特に、今年度は、すでに保有しているうつ病患者のデータ(前回採択研究費によって得たデータ)と比較検証を行いました。②縦断的質問紙研究:疼痛に対するコーピングの柔軟性の程度が、慢性ストレス及び疼痛の主観的症状の程度を予測できるかどうか検証しました。③介入研究の予備研究:より柔軟なコーピングを用いるための訓練によって、主観的ストレス及び疼痛症状が緩和するかどうか検証しました。特に、これまでの研究成果(うつ病患者の訓練結果、waiting list、cognitive-behavioral therapy)と比較し、慢性疼痛に対する訓練効果を検証しました。
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