研究課題/領域番号 |
19K03332
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研究機関 | (財)冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
舘野 由美子 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (80570449)
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研究分担者 |
毛利 伊吹 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (20365919)
疋田 尋子 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (40771449)
矢崎 大 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (40807111)
酒井 由美子 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (50772399)
濱野 晋吾 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (80786806)
野藤 夏美 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (50807112)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 復職支援 / 上司による支援 / 複線径路等至性アプローチ / TEA |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,メンタルヘルス不調者が復職過程で受ける上司からの有効な支援内容を解明し,適切な支援を受けるための「復職支援要請システム」を開発することである。 初年度は,復職過程で実際に役に立ち有効であった支援内容を明らかにするため,復職後半年以上の安定した就労を継続できているクライエント10名にインタビュー調査をおこなった。調査は復職過程における上司からの支援について,復職前から復職後の安定した就労の再確立までを時系列に沿って問う半構造化面接であった。結果は逐語録として起こし,個人の人生を時間と共に描くことを目標とする質的分析方法の複線径路等至性アプローチを用いて分析し以下の結果を得た。 休職前に【心身の不調】を示すが,【上司とのコミュニケーションは十分にとられない】ことが多く,不調者は【自責感】を強め,【気持ちに余裕がない】状態が続いた。休職中の上司や産業医との定期面談やメールのやり取りは,【職場への帰属意識の維持】や【職場復帰に向けたモチベーションの維持】に役立つ一方,【面談に行くことのつらさ】を感じた。【復職への不安】を経て【復職】後,【仕事が無い】時期には【人の感情に敏感に反応し繊細】であった。【業務負荷がかかってくる】,【責任を持たされる】時期に分岐点が見られ,【モチベーションを保てる】,【上司から信頼されていると感じる】場合と,【根本的な解決に至っていない】思いを抱き,再休職する場合とがあった。前者はその後,上司から【主体性を重んじられる】,【評価される】という経験をし,徐々に上司とのコミュニケーションの頻度が増し,【職場での存在意義を感じる】ことが増え,【上司の期待に応えるためにどうすればいいか考える】状態に至り,【半年以上の安定した就労継続】を実現していた。さらに【仕事への向き合い方が前向きになる】ことが本人にとっての等至点であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では,初年度中にインタビュー調査を終え,それをもとにパンフレットを作成する予定だったが,研究者の所属機関における倫理委員会の承認を得るのに時間を要し,さらに,インタビューガイドを念入りに検討したため,インタビュー調査を終了するところまでしかいかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず,初年度の調査結果をもとに,復職における上司からの支援についての心理教育に用いるリーフレットを作成する。復職を目指すクライエント及び上司に,リーフレットを用いて上司からの支援の有効性や必要性を心理教育する。その後,クライエントは心理療法の中で心理士と共に自身の現状を客観的に把握し,「いま必要な支援」をまとめ書面に記載する。記載用の書面は年月日や氏名,診断名などクライエントの基本情報のほか,現在の心身の状態,いま必要な具体的支援内容,主治医からの承認,上司の意見などを書き込めるワークシートを開発する。これは復職前後を通じて必要に応じて何度でも利用することを想定している。心理教育やワークシートを用いた復職支援要請システムの運用を継続的に20名のクライエントを目標におこない,事例を集積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は調査研究およびそれをもとにしたパンフレット作成までおこなう予定だったが,諸事情により,パンフレット作成までいたらなかった。そのため,パンフレット作製費用が計上されず,次年度使用額が生じた。 次年度早期にパンフレット作成予定である。
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