研究課題/領域番号 |
19K03334
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
篠崎 未生 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 在宅医療・地域医療連携推進部, 研究員 (30813828)
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研究分担者 |
新畑 豊 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (80501212)
櫻井 孝 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, もの忘れセンター, センター長 (50335444)
三浦 久幸 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (20270481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | late-life depression / 虚弱高齢者 / 機能低下 / 心理的フレイル / 心理的レジリエンス / 心身相関 / 再入院予防 |
研究実績の概要 |
本研究は,急性期治療後の高齢入院患者の虚弱を予防し,身体的回復を促進するための心理的支援に関する知見を得ることを目的としている。 2020年度は,高齢入院患者の機能低下後の抑うつの大きさに個人差が生じるメカニズムを明らかにするべく,年齢の影響を中心に解析を行った。その結果,患者が機能低下をどのように自覚しているかが抑うつに大きく関与し,さらに,機能低下の自覚と抑うつとの関係において,年齢の調整効果があることを明らかにした。すなわち,60代あるいは70代の患者では,機能低下を自覚している場合に抑うつの悪化がみとめられたのに対して,80代後半以降の患者では,機能低下の自覚がある場合においても,必ずしも抑うつの悪化には至っておらず,機能低下のレベルやその自覚の程度だけではなく,年齢の高低によっても抑うつの大きさが異なる可能性を示す興味深い結果を得ることができた。 また,心理的要因と身体的な回復との関連について解析を行った結果,心理的レジリエンスが高い患者は,機能低下があっても抑うつは低値を維持し,退院時及び退院3ヶ月後の栄養状態の改善や歩行機能の改善が良好であることを示唆する知見が得られた。 これらの成果の一部は,第62回日本老年医学会学術集会,日本心理学会第84回大会,日本転倒予防学会第7回学術集会,第39回日本認知症学会学術集会,第35回日本老年精神医学会にて発表を行った。また,近日中に海外ジャーナルへの原著論文投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では2022年までに750名程度の新規データの収集を予定し,2019年度までに約330名のデータ収集を終えていたが,2020年度は新型コロナウィルスの流行により,入院中の高齢患者を対象とした新規データの収集は困難な状況が続いた。そこで,当センターに蓄積された入院患者のデータベースと診療情報記録も併せて解析できるように計画を変更し,倫理・利益相反委員会に申請を行った。現時点ですでに723名分の入院時データ及び退院1年後の予後データの整理を終えており,当初の計画を大幅に変更することなく解析も行えている。 2020年度は,急性期治療後の身体機能の低下に伴う抑うつに関して有意義な知見を得ることができ,また,心理的要因と退院後の身体的な回復との関連を示唆する知見も得ることができた。これらの成果の一部を学会で発表し,また,近日中に原著論文として投稿する予定である。 以上をふまえ,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,退院後早期に再入院となった患者の心理的,身体的特徴を明らかにし,再入院予防に有効な心理的支援についての検討を進める。 現在もなお,新型コロナウィルスの流行は収束しておらず,2021年度も入院中の高齢患者を対象とした新規データの収集は引き続き困難な状況が予想されるため,2020年度と同様,当センターに蓄積された既存データも活用しながら研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行により,新規データの収集が困難な状況が続くことが予想されたため,当センターに蓄積された既存データを大幅に活用する形へと計画の変更を行った。看護師資格を有する研究補助を雇用し,診療情報記録から退院後5年以内の再入院状況と生命予後に関するデータの抽出作業を進めたが,扱う情報が大幅に増え,整理に時間を要したことから,2020年度のデータベース更新は見送り,次年度使用額が生じた。データベースの更新作業は,これらのデータ整理を全て終えた段階で実施する。 また,論文投稿費および英文校閲費に関しては,現在,原著論文が完成間近であり,近日中に執行予定である。
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