研究実績の概要 |
保育者が保育の現場で抱える主要なストレッサーを明らかにし,そのストレッサーに対してどのようなコーピング方略をとっているのか,また,そのコーピング方略がワーク・エンゲイジメントにどのような影響を与えているのか調査をおこなった。調査対象者は北陸地方の保育所および認定こども園に勤務する保育者270名であった。質問紙は、年齢・合計勤務年数・勤務形態などを尋ねるフェイスシートと以下の3つの尺度から構成された。(1)保育士ストレス評定尺度(赤田, 2010)(2)職務評価コーピング尺度(森本・嶋田, 2010)(3)ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度短縮版 (Shimazu,et al., 2008)。各尺度に関して因子構造を確認した後,「ストレッサー(4因子)→ ストレスコーピング方略(5因子)→ ワーク・エンゲージメント(1因子)」のモデルを仮定して共分散構造分析をおこなった子ども理解ストレッサーは問題解決コーピングに負の影響が、子ども対応のストレッサーは休息・気晴らしコーピングに負の影響がみられた。保護者対応ストレッサーは,問題解決,諦め,感情発散,休息・気晴らしコーピングにそれぞれ正の影響がみられた。時間・給与欠如のストレッサーは,休息・気晴らしコーピングに負の影響がみられた。また、問題解決,諦め,および、休息・気晴らしの各コーピングがそれぞれワーク・エンゲージメントに有意な影響を与えていた。本結果から,保育者は同時に様々なストレッサーを抱えていること,特に保護者対応のストレッサーに対しては多様なコーピングを併用して対処していること,保育者のワーク・エンゲイジメントを向上させるコーピング方略は問題解決と休息・気晴らしであり,逆に低下させるのは諦めであることが示された。
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