本研究は、ジャンルの異なる芸術家の「自我のための退行」の有り様がどのように違うかを検討するために、ロールシャッハ法を用いて、芸術家3群の「自我のための退行」の有り様の違いを探った。抽象彫刻家は、舞台美術家と比べて、色彩の象徴的使用、象徴的使用の合計、一次的過程式の合計において、多くの反応を産出した。また、コンテンポラリーダンサーは、舞台美術家よりも、イメージの合成においてより多くの反応を産出した。舞台美術家は脚本や演出による制約を受けるために、思うままに退行することができず、現実の制約を受けない抽象彫刻家やコンテンポラリーダンサーはより自由に「自我のための退行」が可能であったと考えられる。
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