研究課題/領域番号 |
19K03345
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研究機関 | 医療創生大学 |
研究代表者 |
山本 佳子 医療創生大学, 心理学部, 教授 (90336462)
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研究分担者 |
大島 典子 医療創生大学, 教養学部, 准教授 (80382802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 被災 / 子育て / 心理的壁 |
研究実績の概要 |
今年度は、今までのインタビュー調査を分析し、まとめた。被験者数が比較的充分であった2015年のデータを基にまとめ、分析し、「東日本大震災後の福島における子育て世代を取り巻く現状~心理社会的側面から~」として、発表した。 2015年に、東日本大震災当時、福島県内の保育所及び幼稚園に在籍していた子どもの保護者を対象に、子育てや家族に関する心配事、支援についてなどを尋ねる半構造化面接を行なった。そのインタビューの内容を21項目に分類し、それを【原発の影響】、【復興・支援】、【人間関係における「心理的な壁」】、【子どもに関係する心配事】、【環境の変化】という5つのテーマのもとにまとめられ、福島にとっての被災の影響は原発事故に関わる被害も大きく、問題の予測や統御が困難である状態が続く限り、メンタルヘルスの問題は、様相を変えつつ存在し続けると考えられた。また、そういった危機的状況の時こそ、ソーシャルサポートが重要であるにもかかわらず、放射能被害や帰還に関する態度、賠償金に関わること、加えて地域の変化への戸惑いや苛立ちが【人間関係における「心理的な壁」】を生み出し、メンタルヘルスの問題に負の影響をもたらす臨床的な課題であると考えられた。 次に、本研究のパイロット研究として、今までにエントリーしていた被験者7名へのインタビュー調査を行った。被災地も、復興の名のもとに変化しており、帰宅困難地域が解除されたり、自主避難の人たちへの支援が打ち切られたり、復興住宅にも転居が終了したりなどの環境変化や、当時保育園児だった子どもたちも中学生になり思春期を迎えるなどしていた。その中で、被災地での子育てを親に振り返ってもらい、そのプラスやマイナスの影響についてのインタビューを施行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、今までのインタビュー調査を分析し、まとめることが第一の目的であった。そこで、被験者数が比較的充分であった2015年のデータを基にまとめ、分析し、「東日本大震災後の福島における子育て世代を取り巻く現状~心理社会的側面から~」として、発表した。 また、今までの研究でエントリーされ、関係のあった対象査に対し、パイロット研究としてのインタビュー調査も行ったが、参加者は少なかった。 そのため、新たな被験者エントリーのために、避難者が比較的多く在学している中学校に依頼し、調査のためのエントリーのお願いの案内書を配布した。しかし、ちょうど、新型コロナ感染対策のための休校措置が発表され、全くエントリーは進まなかった。 その後、休校や臨時措置が続いているために、学校からの対象者の依頼は難しくなってきている。新たな方法を考える必要が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
被験者は、令和1年度の中学生と言う子どもを持つ親世代と考えていたため、中学校などとの協力が必須であると考えたが、新型コロナウイルスの流行により、生活が様々に制限され、調査依頼どころではない現状にある。 一方、被災地の大学生の中には、福島の震災や津波、原発事故を経験したものも多く、年齢的にも思春期を超えており、言語化能力もそれなりに備えているため、過去を振り返ることが可能になっているように思われる。思春期の最中の子どもや親にはまだ客観視できないことも、表現が可能になっているように思われるため、大学生を対象者としてエントリーし、インタビューすることも考えている。 また、被験者が不足する場合、新型コロナの流行と自粛生活が長期化するようであれば、手段としては、ネットによるシステムを使うことも考えてはいるが、混乱の中で、相手の状態を考えない依頼は、却って否定的感情を刺激するようのも思われ、もう少し時期を選ぶしかないかと考えている。 しかし、一方では、震災被害・津波被害・原発被害・台風被害など複数の被災体験が、問題を複雑にし、大きくもすると言われていることから、「新型コロナ流行」に伴い、その感染恐怖のストレスへのこころのケアも必要であると思われ、そのと連動しての調査の方向も検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者のエントリーが遅れており、調査が計画通りに進まなかったため。また、年度末の研究会・発表の場へも新型コロナの流行を予防するための自粛の指示により、実行することができなかった。 しかし、パイロットスタディのまとめや、新たな大学生インタビュー、新型コロナ感染予防のための自粛生活に対する心のケアなどの取り組みのため、令和元年度分を使用する予定である。
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