研究課題
目的:本研究では,高齢者の不眠に対する認知行動療法(CBT-I)を最適化し,有効性の高い介入手法を確立することを目的としている。本年度は,ウェブ調査データを利用し,高齢者の不眠の特徴を明らかにすることを目的とした。方法:先行研究(Irwin et al., 2006)に基づいて,高齢者を55歳以上と定義した。そして,不眠重症度質問票(ISI)のカットオフ値を用いて不眠なし群(ISI<10)と不眠あり群(ISI>=10)に分類した。従属変数として,睡眠衛生実践尺度(SHPS),睡眠の質質問票(PSQI),睡眠に対する非機能的信念と態度質問票(DBAS),睡眠反応性尺度(FISRT),入眠前過覚醒尺度(PSAS)を用いた。結果:高齢者のうち不眠あり群は17.5%であった。高齢者の場合,不眠なし群(n=141)に比べて,不眠あり群(n=30)は,SHPSの「覚醒関連行動」「睡眠覚醒スケジュール」,PSQI,DBAS,PSASの「身体的過覚醒」「認知的過覚醒」の得点が有意に高いことが明らかとなった。考察:本研究の結果から,高齢者の不眠症では,睡眠の質が低下しており(PSQI),運動や光暴露,臥床時間の長さといった「睡眠覚醒スケジュール」に問題があること,加えて,覚醒しやすい行動(睡眠覚醒行動)をとりやすいことが明らかとなった。また,入眠前の身体的,認知的過覚醒が高いことからも,生活習慣(運動など)の改善と睡眠スケジュール法の実施の重要性が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
高齢者への治療技法を提案する上で,重要な要因を明らかにしたものの,新型コロナウイルス感染症の影響で,実験研究の実施が遅れている。
身体活動や光暴露の具体的な強度・時間などを明らかにし,それらが不眠の維持に及ぼす影響について検討していく。
新型コロナウイルス感染症の影響により,調査および実験研究に係る費用が支出できなかったため。今年度は,大規模サンプルによるインターネット調査を実施する。
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東京家政大学附属臨床相談センター紀要
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