研究課題/領域番号 |
19K03350
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
須藤 明 文教大学, 人間科学部, 教授 (20584238)
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研究分担者 |
戸井 宏紀 東洋大学, ライフデザイン学部, 助教 (00780397)
岡本 吉生 日本女子大学, 家政学部, 教授 (20315716)
丸山 泰弘 立正大学, 法学部, 教授 (60586189)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多職種協働 / 情状鑑定 / 更生支援計画 / アセスメント / 証人尋問 |
研究実績の概要 |
年間5回の研究会を実施し、そのうち対面実施は1回であった。具体的には、情状鑑定書と更生支援計画書に関する分析を行ったほか、藤原正範氏(日本福祉大学研究フェロー)を講師として招聘し、刑事裁判の入口支援における心理専門職と福祉専門職の連携の可能性と課題について講演していただいた。その後の議論を通じて、以下の点が明らかになった。 情状鑑定と更生支援計画のアセスメントに関しては、当然ながらその目的と専門性に違いがある。情状鑑定では被告人の心理・社会的側面に関して精緻な分析が行われ、刑事裁判の量刑概念である「犯情」と「一般情状」の双方に影響を及ぼし得る。一方、更生支援計画ではアセスメントは行うものの、社会復帰後の支援に重点を置くために一般情状事実を把握するにとどまってしまう傾向がある。そのため、心理専門職と福祉専門職が互いに補完し合う体制やシステム作りが求められる。また、今後は、一部の弁護士会で試行している「寄り添い弁護士制度」のような出口支援でも、心理・社会面で課題を抱えている場合には、人間行動科学の専門家による関与を考えていく必要がある。ただし、こうした多職種協働チームを作るに当たって、アメリカのような公的弁護士事務所の制度を持たない日本においては、経済的・人的な基盤をどのように確立していくのか、多くの課題が残っている。 鑑定事例に関しては、研究員が2件の情状鑑定を行った。1件は、少年による放火殺人事件、もう1件は、成人男性による妻殺害事件である。公判は開始されていないが、前者の事例においては、社会復帰後の支援体制をどのように構築するのかといった課題があり、この点は、今後のアクションリサーチの中で検討していくことになる。 なお、海外の学会で研究成果の発表および本研究テーマに関する意見交換をと考えていたが、コロナの感染状況や所属大学の出張基準等に鑑みて本年度は見送った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鑑定事例の集積がやや不十分であったこと、学会発表等を通じて本研究テーマに関するする海外の実情調査を行う予定だったが、コロナの影響もあって実施できなかった点は、想定していた進捗よりも遅れている。ただし、必要な心理専門職と福祉専門職との協働・連携に関する課題や今後の展望は、かなり明確になってきたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
情状鑑定で心理専門職がかかわった事例、更生支援計画で福祉専門職がかかわった事例の分析をさらに進める。また、国際学会参加を通じて多職種協働に関する海外の実情調査も行う。具体的には、9月6日から9月9日に開催されるヨーロッパ犯罪学会(イタリア・フィレンツェ)、世界ソーシャルワークアジア会議(フィリピン・セブ島)への出席を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度中に学会発表等を通じて本研究テーマに関するする海外の実情調査を行う予定だったが、コロナの感染状況に鑑みて海外での研究活動を断念し、本研究の延長申請をしたことにより、次年度使用額が生じた。 2023年度は、ヨーロッパ犯罪学会(2023年9月4日~9日、イタリア・フィレンツェ)、世界ソーシャルワーク・アジア会議(2023年11月5日~7日、フィリピン・セブ島)の学会での出席及び発表、また、本研究の成果報告会を兼ねたシンポジウム実行費用として使用する予定である。
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