研究課題/領域番号 |
19K03351
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研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
秋本 倫子 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (70410157)
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研究分担者 |
石原 宏 島根大学, 学術研究院人間科学系, 准教授 (40378500)
星 詳子 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (50332383)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 箱庭療法 / 近赤外分光法 / 共感 / 関係性 / 共創 / 相互作用 / ハイパースキャニング |
研究実績の概要 |
本研究では、箱庭療法を実験的に模した場面で、クライエントとセラピストの相互作用を、共感という観点から、両者の前頭前野の2箇所の脳活動を、携帯型脳活動計測装置(ウェアラブルNIRS)を用いて、計測することにより探究している。 2020年度は、新型コロナウィルス感染症流行に伴い、協力者を集めての実験を行うことを中断せざるを得なかった。そこで、サンプル全体の量的分析ではなく、1ペアについて、クライエント、セラピスト両者の脳活動、箱庭制作場面での行動、およびセラピストの内省を丁寧に分析し、そこで生じている相互作用を検討した。その結果、ビデオに記録された箱庭制作中の行動とその逐語記録,NIRS の時系列データを同期させて見ることにより,それぞれのデータの関係を検討した。クライエントとセラピストでは、前頭葉2チャンネルにおける脳活動のパターンが異なり、箱庭療法場面において二者が異なる認知的姿勢で臨み「むきあっている」ことが示唆された。また、NIRSは、行動を眼で見て判断した場合とは、異なる観点を提供すると考えられた。また、セラピスト自身の内省を併せて行った質的分析では、セラピストによる「見守り」が、従来、言われてきた「ついていく」という言葉では包含しきれない、複雑な様相を持つものであったことがわかった。このような脳活動データと行動を合わせた箱庭療法の丁寧な個別分析は世界でも例を見ないものであり、共創学会第4回年次大会において発表した。他方で、対面による心理療法が臨床現場でも困難になり、オンライン面接などが普及し始めた。また実験場面でも、マスクやアクリルボードを使用することが必要になった。このような実験デザインの変更は、改めて、箱庭療法でも対人相互作用が治癒的となるための必須の条件は何かを検討する機会となった。このようなオンラインでの対人関係の特殊性を考察して論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の流行で、協力者を集めて実験の実験を中止せざるを得なくなり、2020年4月から2021年2月までは新しいデータの取得ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 新型コロナウィルス感染症の流行の状況を見て、可能であれば、2021年7月~9月の、大学が夏休みの時期に実験を実施する。 2.実験の実施が困難な状況でサンプル数を増やすことができない場合は、既に取得した個別データを混合研究法で分析することに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 新型コロナウィルス感染症流行の影響で、実験の実施を中断したため、実験にかかる人件費・謝金等の支出が少なかった。また、学会出張がなく、参加した学会、研修会等も全てオンラインで行われたため、交通費、宿泊費等の旅費の支出が少なかった。 使用計画:1.2021年夏以降に実験を実施する予定であり、参加者や補助者の謝金に使用する。2.データ解析に学生アルバイトを雇用する予定であり、謝金として使用する。3.秋以降、出張して参加する学会費用に充当する。
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