研究課題
本研究では、ASDの社会的コミュニケーションの困難の背景にある要因について、報酬の価値割引の枠組み、特に利己性(利他性)を表す社会割引と、衝動性 (セルフコントロール)を表す遅延割引に焦点を当てて、割引率という定量的測度を用いて検討する。さらに、ASD児の社会性のアセスメントツールとしての適用可能性を検討することを目的とする。2021年度は、2020年度に引き続き、定型発達児(6歳から12歳)を対象とした調査(研究1)と、ASD児を対象とした実験(研究2)の実施を計画していた。小学校での調査は実施できなかったが、医療機関での継続的な研究が可能となったことから、ASD児およびADHD児を対象とした実験は実施できた。報酬量や報酬の質の異なる複数の条件を設定し、ASD児およびADHD児の社会割引率と遅延割引率を測定した。また、同一参加児の社会割引と遅延割引を、一定の間隔で複数回測定し、これらの結果と、治療経過との関連について検討した。2022年度は、ASD児と定型発達児の社会割引を比較し、ASD児の社会性に影響を及ぼす要因について検討する。本研究で得られたデータと、既存のASDのアセスメントツールによる評価との関連について検討することで、社会性のアセスメントツールの開発へとつなげる。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、小学校での調査実施が延期されたため。
小学校での調査実施に向けて、引き続き、研究協力先の小学校と情報共有を図りながら、準備を進めておく。新型コロナウイルス感染予防を徹底しながら、小学校以外の機関でも実施できる方法を検討する。現在、研究を実施している医療機関に加え、新たに療育機関での研究対象者を追加する。
新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していた小学校での調査が延期された。調査実施に必要な物品費、人件費、および謝金を支出しなかったため次年度使用が生じた。小学校での研究活動が可能になり次第、小学校での調査を開始する。これまでの研究成果を発表するために、国際学会への参加を計画していたが、オンライン開催となったため、国際学会に参加するための旅費を支出しなかった。次年度に現地で開催される国際学会への参加を計画している。
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