研究課題/領域番号 |
19K03354
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
吉村 晋平 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (40646767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感情制御 / 感情認識 / 抑うつ / 不安 |
研究実績の概要 |
感情制御の困難は抑うつや不安に共通する特徴の一つである。本研究では感情認識のプロセスがどのように感情制御に影響するかを解明し、その促進効果と神経基盤の因果的役割を検討することを目的としている。これらの検討を通して、認知行動療法などで用いられている感情制御の機序を明らかにし、より効果を高めるための方法を発展させる。 2019年度から2020年度は、感情障害における感情への気づきと感情粒度が感情制御の遂行に及ぼす影響を研究することを計画していた。2019年度においては、3つの研究を行った。 研究1:感情認識の個人差を測定し、ネガティブ感情に再評価を行う感情制御課題を実施することであった。パイロットスタディとして、Emotional Go/NoーGo課題を用いて複数の感情に対する認識の精度と区別の正確さを測定し、感情認識の個人差とした。そして、Emotional Go/NoーGo課題によって測定された感情認識の個人差と感情制御の遂行にどのように関連するかを検討するために、同じ研究参加者に感情制御課題を実施した。このパイロットスタディの結果からは、Emotional Go/NoーGo課題によって得られた感情認識の個人差は、感情制御課題におけるパフォーマンとの相関が低いことが明らかになったため、感情認識の個人差を測定するためには、より生態学的妥当性の高い方法が求められることが明らかとなった。 研究2:感情制御方略の使用傾向と感情制御を妨害する要因である認知バイアスの関連を検討した。パネル調査により、抑うつ、感情制御方略、認知バイアスを3ヶ月間隔で2回測定した。抑うつが感情制御方略と認知バイアスの交互作用によって予測されることが明らかとなった。今後、交差遅延効果モデルを用いて変数間の方向性を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に行ったパイロットスタディの結果、感情認識の個人差を測定するためには研究方法のアップデートが必要であることが明らかとなった。感情認識の個人差を測定する方法には、Levels of Emotional Awareness Scaleがあるが、本尺度は感情認識の一側面である感情への気づきに焦点を当てていること、日常的に行われている感情認識の個人差を扱うためにはより生態学的妥当性のある方法を検討する必要がある。また、感情制御を妨害する要因として認知バイアスがどのように影響するかを検討した。この検討は引き続き分析手法を修正しながら進めていく。一方で、2020年1月ー3月の期間は、新型コロナウイルスによって研究遂行が困難となったため、予定していた実験及び分析を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も引き続き感情認識の個人差と感情粒度の程度が感情制御に及ぼす影響を検討する。2019年度に行ったパイロットスタディの方法をブラッシュアップし、さらに経験サンプリングによって感情認識の個人差を測定するとともに日常的な感情制御方略の使用傾向及び気分状態との関連を検討する。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大と、研究代表者の所属機関の変更により、研究計画の変更及び修正が必要となると予想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、物品費に研究備品及び消耗品の購入を含めていたが、所属機関において代替品が設置されたこと、研究の進め方を変更したことで当該年度では物品費を執行しなかった。また、旅費については、所属期間での業務の都合上、学会に参加することが困難となったため、使用しなかった。これらの理由により、次年度使用学が生じた。 使用計画については、研究責任者が所属期間を変更したため、これまでと研究環境に大きな変化が生じることとなった。研究計画を遂行するために、必要な研究機器等の購入または、研究環境の変化に伴って生じるやむを得ない研究計画の変更に対応するために用いる。具体的には、ソフトウェアの購入、オンライン実験の遂行経費に用いる予定である。
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