研究課題/領域番号 |
19K03354
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉村 晋平 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (40646767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感情認識 / 感情制御 / オンライン実験 / 認知的再評価 / アクセプタンス |
研究実績の概要 |
2020年度は研究代表者の所属機関移動と新型コロナ感染拡大により、当初の計画で予定していた心理実験が実施困難となったため、計画を一部変更することとなった。 当初の予定では対面での心理実験を行う予定であったが、オンラインでの心理実験に切り替え、その準備と実施に注力した。オンラインでの心理実験では、本研究の検討点の一部である感情認識の困難が感情制御遂行に与える影響と、感情認識による感情制御の促進について検討するために、2つの実験を行った。実験参加者はクラウドソーシングによって募集し、約300名分のデータを得ることができた。 1つ目の実験では、シナリオ課題を用いて感情誘導を行い、感情認識を行う群と行わない群の2群比較により、その後の感情制御においてどのような方略を選択するか、また選択した方略の有効性に変化が見られるかを検討した。その結果、感情認識を行う群と行わない群では選択する方略には大きな違いは見られないものの、感情認識を行う群の方がより感情制御の有効性が高まる可能性が示された。 2つ目の実験では、感情誘導を行った上で2種類の感情制御方略について、その効果について数十秒の時系列的変化を検討した。その結果、認知的変容による感情制御は、感情をアクセプトする感情制御と比較して、方略の遂行から30秒以降ではより大きく感情を制御する効果があることが示された。また、同時に感情認識の個人差を測定したが、その個人差と感情制御方略の効果の時系列的変化との関係についてはまだ分析段階である。 これらの実験を通して、感情認識による感情制御の促進効果について検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者の所属機関の変更と新型コロナ感染拡大という予期しない状況変化があった。しかし、当初の研究計画の一部を変更してオンライン実験に切り替えることにより、実験室実験でなくとも仮説に近い結果が得られ、予想以上の成果であった。ここまでの研究結果については、再現性の検討や、未分析のデータの解析を行い、さらに多面的な検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の所属機関の変更と新型コロナ感染拡大により、今後も一部の研究計画は変更する必要がある。特に当初は経頭蓋電気刺激を用いて感情制御機能の操作を行う予定であったが、所属機関の変更と対面での心理実験が困難になったことによってそれを行うことが困難となった。よって、今後の研究遂行においては、オンライン実験による検討を中心として、抑うつ・不安との相関関係や、抑うつ・不安に関連する認知的要因との関連の検討に注力する。一方で、予定されていた脳機能画像研究についても、現所属機関での実施可能性や研究協力者である共同研究者との連携により、可能な手法を模索したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関変更と新型コロナ感染拡大により、一部の研究計画を変更した。よって、当初の予定で使用する予定であった旅費や対面での実験による実験参加者への謝金は使用する必要性がなかった。一方で、オンライン実験についてはクラウドソーシングの使用料に物品費を使用する必要があったが、対面での実験に必要な物品購入による使用の必要がなくなったため、結果として高額な次年度使用額となった。 翌年度については、脳機能画像研究を行った場合に必要なデータ解析用のワークステーションの購入や、継続して行うオンライン実験に必要な物品費の使用を行う。また、ここまでに得られた研究成果を論文化し、投稿するための投稿費用にも用いる予定である。
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