研究実績の概要 |
・2022年度に行った研究活動の成果 本研究の主要な目的である感情認識と感情制御の連関を明らかにするため、感情認識と感情制御の相互作用を直接検討するオンライン実験を行った。オンライン実験では150名の研究参加者を確保し、結果として、感情認識と感情制御を組み合わせた条件では、感情制御のみを行う条件よりもネガティブ感情が有意に高く、感情制御の効果が低くなることが明らかになった。さらに、感情に伴う主観的覚醒度も測定しており、一般線形モデルの分析の結果から、定常的な覚醒は感情認識と感情制御を組み合わせた感情ラベルの選択と感情制御を行う条件において状態的覚醒が高い場合にはネガティブ感情の制御を妨害する可能性があることが示唆された。本研究の成果は今後、学会発表および論文発表を行う予定である。 また、2022年度は機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて感情認識と感情制御の相互作用に関わる神経基盤を検討した研究を国際学術誌に発表した(Yoshimura, S., Nakamura, S., & Morimoto, T. 2023. Neuroscience Research, 190, 51-59.) ・研究期間を通じての成果 本研究の目的は感情認識と感情制御の連関を解明することで、うつ病等の感情障害においても有効な感情制御方略を探索することであった。しかし、新型コロナ感染拡大の状況下に置かれ患者を対象にした研究を行うことはできなかった。一方で、感情認識が感情制御に対して促進・抑制両方に対して影響があることを示したこと、fMRIを用いた研究でその神経基盤の一端を明らかにした点は重要な成果と言える。まとめると感情認識が感情喚起時の覚醒レベルを媒介して感情制御に影響するプロセスが仮定される。今後はこの仮説を検証するためにアドレナリン神経系と感情認識の関係について研究を進めていきたい。
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