研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症 (以下ASD)は対人コミュニケーションの障害,こだわりを主徴とする症候群であり,認知能力のアンバランスや感覚異常を持つ。原因として、遺伝や環境要因が関与している可能性があるともいわれている。本研究では、環境要因に注目した。外部因子として大気汚染物質、薬物、ウイルス感染、または妊娠中の合併症などがこの障害につながるかどうか等、研究が進んでいる。本研究では発現要因として外部環境因子が挙げられている(Messina et al, Front Physiol, 2018)が詳細は不明である点に注目している。分担研究者小野田は,carbon blackナノ粒子の投与を受けた妊娠マウスから生まれた仔の大脳皮質で,シナプス機能を担うアストロサイトのタンパクのglial fibrillary acidic protein (GFAP)の濃度の上昇を見た(Onoda et al,Nanotoxicol, 2017)。ナノ粒子は酸化ストレスを生じさせ,脳細胞にダメージを与える (Wilson et al, 2016)。分担研究者油井はASDの病態因として,抗酸化脳の低格性を発見した(Yui et al, Environ Sci Pollut Res Int, 2017)。これらの知見をもとに,アセスメントシステムの感覚プロファイルSensory Profile(SP)日本版及びウェクスラー知能検査WISC-ⅣとWAIS-ⅣからASDの外的刺激に対する知覚認知機能の所見を導く。そのうえでASDの知覚認知機能とナノ粒子関連のシナプス機能損傷指標(血清GFAP濃度),健康レベルを反映する酸化ストレス/総抗酸化能の指標比との関連を調べる。
|