本研究はわが国の慢性痛患者に対するマインドフルネストレーニングの介入効果についてランダム化比較試験によるエビデンスを得るのが目的である。昨年度に引き続きランダム化比較試験に先だって個人療法のマインドフルネストレーニングによる介入効果を少数例で検討した。2例(症例CおよびD)について8回のマインドフルネストレーニングの前後の効果を検証し、それぞれの指標について改善、不変、悪化などが混在する結果を得た。 症例Cでは介入前後で痛み強度(NRS)が8点から6点に改善し、痛みの感覚要素が24点から6点、痛みの感情要素が12点から6点と大幅に改善していた。痛みによる生活障害もBPI生活障害尺度が7.9から5.4点へ改善したが、PDASは12点から18点に悪化していた。不安(HAD不安尺度)は12点から10点に若干改善し、抑うつ(HAD抑うつ尺度)は8点から3点に改善した。マインドフルネス傾向(FFMQ)は109点から125点へと改善した。 症例Dでは介入前後で痛み強度が7点から7点と不変であった。痛みの感覚要素が5点から9点とやや悪化、痛みの感情要素が1点から1点と不変であった。痛みによる生活障害もBPI生活障害尺度が2.3点から3.3点へとやや悪化したが、PDASは57点から0点に著明改善していた。不安は11点から14点に若干悪化し、抑うつは不変であった。 また、2021年度に介入した症例Bのフォローアップ調査を行った。本症例は痛み強度(NRS)を除く痛みの感覚要素、感情要素、痛みによる生活障害、抑うつについてすべての指標で改善が認められていたが、フォローアップ時にはさらに改善していた。痛み強度は介入前後でやや悪化していたが、フォローアップ時にはかなり改善していた。抑うつはフォローアップ時に軽度悪化していたが、介入前よりは良好な状態を維持していた。
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