研究課題
本研究は、高齢者や認知症患者を対象とした医療上の意思決定支援向上のために、ディシジョンエイド(Decision Aid:DA)の枠組みに基づき、推奨される情報提供の在り方を検討・開発することを目指している。本年度は、1)高齢者に対して推奨される情報提供に関する情報取集、2)プロトコール立案(介入対象・方法・アウトカム設定など)、3)高齢者に多い疾患に関わる専門家へのヒアリングを行った。1)では、高齢者では特にポジティブな感情を引き起こす情報に不均衡に注意が向くとされる社会情動的選択性理論の観点や、ユニバーサルデザインの領域で蓄積された情報提供の手法などを鑑みる必要性が明らかになった。2)では、同一内容について切り口を変えて情報提供を行った際のアウトカム設定などを中心に議論を行い、既存のスケール(Decision Conflict Scale, Decision Regret Scaleなど)の適応可能性なども検討した。その結果、対象者の特性を考慮すると、本研究では具体的な疾患・治療選択場面を例にして、情報提供に関する現場のニーズを把握するとともに、専門家パネルでの情報ツール作成などを通し、医療者および利用者にその有用性や満足感などを尋ねる手法が望ましいと考えられた。3)では、TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)、心房細動に対するアブレーション治療、乳がんの3領域の専門家に、高齢者および認知症患者を対象とした治療選択場面で、患者とのコミュニケーションや情報提供に関するニーズを聴取した。いずれの領域でも認知機能低下を有する患者に向けた同意取得や情報提供についての課題が同定され、今後は、DAを用いた介入に適するかの視点でより詳細な検討が必要であることが明らかになった。
3: やや遅れている
DAを用いた介入に適する領域で、高齢者に多い疾患の同定やヒアリングの調整などにやや時間を要したため。
2020年度に行ったレビューとヒアリング結果をもとに、高齢者医療に携わる特定領域の専門家と連携をして、より焦点を絞ったヒアリングや情報資材の検討などに取り組む。
対面で予定していたヒアリングや会議について、新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みてウェブでの実施としたことなどによる。今後のヒアリングや各種資材作成など、研究推進のために有効活用する。
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膵臓
巻: 35(2) ページ: 136-144