研究課題/領域番号 |
19K03365
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
一谷 幸男 筑波大学, 人間系, 教授 (80176289)
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研究分担者 |
山田 一夫 筑波大学, 人間系, 教授 (30282312)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グルタミン酸受容体 / 統合失調症 / 認知機能障害 / 抗精神病薬 / ラット |
研究実績の概要 |
統合失調症は陽性症状、陰性症状、認知症状を呈する精神疾患であるが、このうち認知機能障害については発症メカニズムの解明、薬物療法の開発が遅れている。本研究では、新生仔期にラットのグルタミン酸受容体を慢性遮断することで統合失調症の動物モデルを作成し、その認知機能障害に及ぼす抗精神病薬投与の効果を検討する。 新生仔期薬物処置として、母ラットから生まれた仔ラットに、7日~20日齢までの14日間連続で毎日2回、グルタミン酸NメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬 MK-801または溶媒を投与し、成体期になってから、空間的作業記憶課題として放射状迷路学習を訓練した。迷路内の各アームの先端に報酬ペレットを1個ずつ置き、ラットがすべての報酬を取り終えるまでを1試行として、効率的な餌取り反応が見られるようになるまで訓練した。毎日の試行開始直前には、非定型抗精神病薬であるクエチアピン、アリピプラゾール、または溶媒を末梢投与し、課題の学習経過に及ぼすこれら薬物の効果を検討した。 その結果、1)新生仔期NMDA受容体慢性遮断により、成体期の放射状迷路学習は顕著に障害された。2)これらの動物に対し、試行直前にクエチアピンを投与しても、学習障害の改善はほとんど見られなかった。一方、アリピプラゾールを投与した群では学習成績の改善が認められ、より速く学習基準に達した。以上のことから、ドーパミン受容体部分アゴニストが、統合失調症の学習・認知機能障害を回復させる作用を持つ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生仔期グルタミン酸NMDA受容体慢性遮断による学習障害を確認するとともに、障害に対する2種類の抗精神病薬の効果を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は学習・認知機能を測定するために、空間的作業記憶課題である放射状迷路学習を訓練し、認知機能障害への抗精神病薬の効果を検討できたので、今後はさらに別の課題として、古典的条件づけにおける潜在制止現象(先行提示効果)を取り上げ、同様の動物モデルを用いて抗精神病薬の効果を検討する予定である。また、新生仔期NMDA受容体慢性遮断とその後の長期社会的隔離を組み合わせた疾患モデルについても、導入していく。
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