研究実績の概要 |
本研究計画では、認知や知覚処理のスタイルが、発達過程における学習によって構成されているとの作業仮説を設定し、乳児の知覚認知に関する様々な実験を行うことで、その獲得過程を明らかにすることを目指した。2021年度も顔刺激を中心に生理的指標、脳活動、注意課題、など、乳児を対象とした様々な知覚認知課題を実施し、その成果を国際誌にて報告した。 本年度の1つ目の研究は、乳児の顔刺激への選好を利用し、最初に目が行くいわゆる「first look」を指標として、上下視野の異方性を、乳児を対象に検討した(Tsurumi et al., 2022)。その結果、家などのコントール画像と比較し、顔画像の場合は上に提示された顔画像を高い確率で最初に見ることが確認された。この結果は、視野全体の中で顔は上に現れやすいという視覚経験を反映したものかもしれない、との解釈がなされた。 次に乳児を対象に、顔刺激を用いて瞳孔反射を計測した(Tsuji et al.,2022)。この研究では、行動ではなく瞳孔反射という生理的指標を用いて、その発達を検討した。その結果、乳児は画像の中の瞳孔の変化に対して反射的に瞳孔径が変化することが示唆される結果が得られた。 2021年度も、乳児を対象にNIRS(近赤外分光法)を用いて脳活動の計測を行い、認知発達の生理学的な基盤を明らかにしてきた。(Yamanaka et al., 2022, Tsuji et al., 2022, Kobayashi et al., 2022)。顔画像、アニメ・キャラクター画像、「いないないばあ」を行っている画像、歩いて向かってくる人物の動画像、などに対する乳児の脳活動を検討した。その結果いずれも側頭部を中心とした部位における顔画像への処理が示唆される結果となった。
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