本研究計画は大域的な逐次最適化手法の一つであるベイズ最適化を実験心理学的な課題,特に物理量が多次元になる心理物理学的課題に適用することを目指したものである.これまでの研究からガウス過程回帰を拡張したガウス過程選好学習(GPPL)およびこれを獲得関数と組み合わせたベイズ最適化が,心的な評価関数(効用関数)の推定に有望な手法であることが明らかになってきた.2021年度の成果は以下の3点にまとめられる. (1)GPPLによる効用関数の推定に必要な試行回数等の評価:効用関数の推定を行う際に必要な2肢選択課題の試行回数やハイパーパラメータをk-fold交差検証により検討した.さらに,2肢選択課題の結果から効用関数を推定する際,GPPLによる予測性能が,線形回帰モデルよりも高いことも交差検証法により示した. (2)GPPLにより推定された個々人の効用関数間の類似度の評価手法の開発 :ガウス過程は無限次元のガウス分布であるため,これまで個々人の効用関数の間の類似度を評価することは行ってこなかった.2021年度は,効用関数の類似度をKL-ダイバージェンスにより評価する方法を構築した. (3)顔・デザイン研究への適用:敵対的生成ネットワーク(GAN)の一つであるStyleGAN2の潜在空間の変数を入力とする2肢選択ベイズ最適化手法により,顔魅力・信頼性・ステレオタイプなどの研究を行いこれらの成果を公表した.またこれとは別にプロダクトデザイン(トイレタリー製品の容器形状)の検討にも本手法を適用し,その成果を公表することで,本研究手法の応用可能性の高さを示した.
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