研究課題/領域番号 |
19K03377
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
中山 義久 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (30585906)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 運動前野 / 前頭前野 / 頭頂連合野 / 大脳基底核 / 機能的MRI |
研究実績の概要 |
前頭葉の高次運動野や頭頂連合野の傷害によって引き起こされる典型的な臨床症例の一つに、麻痺症状はないにも関わらず、外部から動作を指示された場合に指示された内容は理解していても動作として表現できないという症状がある。すなわち動作には高次な表現(動作アイディア)と実際の運動(アクション)の表現があると考えられるが、その神経基盤は依然としてわかっていない。本研究課題は、動作アイディアに基づくアクションの実行過程の神経基盤を明らかにすることを目指す。 本年度は、まず動作アイディアとアクションの要素を時間的に分離することができる新規の行動課題を作成した。具体的には、まず画面上に文字を提示し、その文字が「開ける」もしくは「閉める」といった動作アイディアを指示する。続いて、ドアの画像が提示される。被験者は、提示されたドアの種類に合わせて、開けるもしくは閉めるためのアクションを行うことが求められる。 続いて、この実験課題を遂行中の被験者の神経活動を7テスラMRI装置を用いた機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) によって測定する実験を実施した。解析の結果、現在までに動作アイディアを形成する際には、運動前野背側部、前補足運動野、前頭前野といった前頭連合野領域と、縁上回周辺の頭頂連合野領域の活動が見られ、アクションを決定し準備を行う段階では運動前野背側部と大脳基底核のループ回路が活動するということを見出している。すなわち、動作アイディアの形成と、そのアイディアに基づいたアクションの形成は、どちらも運動前野背側部を中心とするそれぞれ異なる神経回路が関与することを示唆する結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトを対象とするfMRI研究の実験が終了し、解析も順調に進んでいる。さらに解析を進め、学会発表および論文執筆を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度すでに取得したfMRI研究のデータの解析を進めつつ、学会発表をおよび論文投稿を行う。また、fMRI実験で用いた動作アイディアとアクションを分離する課題を発展させ、fMRI実験では見出せなかった、反応時間や正答率などの行動指標を検討できる課題を作成する。この課題を用いて、動作アイディアやアクションの処理プロセスに対する神経基盤の詳細を理解することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒトを対象とした実験の進行過程で得た新たな知見について、次年度に学会で発表することを計画している。また、専門誌への投稿も予定しているため、投稿に関わる費用が必要となる。さらに実験を外部研究機関で行う予定であり、実験実施のための出張費用を支出する必要が生じた。
|