研究課題/領域番号 |
19K03383
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岡田 隆 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00242082)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心的外傷後ストレス障害 / 3種混合麻酔 / オープンフィールド試験 / 高架式十字迷路試験 / 明暗探索試験 / ラット / 偽薬効果 / トラマドール |
研究実績の概要 |
心的外傷後ストレス障害(PTSD)様症状の動物(ラット)モデルを作成するための手法の一つとして近年提案されているsingle prolonged stress(SPS)手続き、すなわち被験体に「拘束」「強制水泳」「麻酔」という刺激を連続して与えることにより症状を惹起する手法について、本研究では「麻酔」(従来エーテルが多用される)の代替として3種混合麻酔(塩酸メデトミジン・ミダゾラム・酒石酸ブトルファノール) の有効性を検討するとともに、SPS手続き後のPTSD様症状の程度がSPS経験時の被験体週齢(4週齢または7週齢)によって差が見られるかについて検討した。本研究課題において新規に導入した行動解析ソフトウェアを用い、ラットの動画データを詳細に分析したところ、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、明暗探索試験において測定される各不安様行動は、SPS曝露の有無による差が見られないこと、また週齢差も検出されないことがわかった。3種混合麻酔は、PTSD様症状を惹起する手続きとしては有効ではない可能性が示されたとともに、エーテル麻酔を含むSPS手続きの場合にはPTSD様症状が惹起されるという先行研究の結果を考慮すると、一連のSPS手続きにおいて麻酔による「意識喪失」の状態が重要というよりは、麻酔手続きによって体内に生じる短期的な何らかの生理反応がPTSD様症状を惹起することが示唆された。 本年度はまた、精神症状の緩和における薬効に影響を及ぼしうる偽薬効果の機序を検索するための動物モデル確立を目的とした実験に着手した。鎮痛薬トラマドールによる鎮痛効果を経験したラットにおいて、鎮痛に対する偽薬効果がオペラント行動を用いた手続きにおいても見られるかどうかを検討するため、報酬箱におけるスクロース水への接近を指標とする測定装置を中温度ホットプレートにより作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心的外傷後ストレス障害(PTSD)様症状を惹起させる標準的手続きの確立に向けた実験について詳細な動画解析を進めることにより一通りの結論を得た点、また精神症状に影響を及ぼしうる偽薬効果の動物モデルに関する実験に着手した点で、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
偽薬効果の機序を検索するための動物モデル確立を目的とした実験を継続する。鎮痛薬トラマドール(19.5mg/kg:10mL/kg)による鎮痛効果を経験したラットにおいて、甘い水という報酬への接近という行動を用いて偽薬効果が検出可能か検討するため、目標箱内の1%スクロース水への接近を指標とした測定を行い、出発箱と目標箱の間に介在させた中温度ホットプレート(摂氏48度)をテスト試行において横断する回数、および出発箱からホットプレート通路に入るまでの潜時を、テスト試行における鎮痛薬投与群と生理食塩水投与群とで比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は6751円であり、ほぼ予定通り執行したと考える。この次年度使用額については物品費(動物飼料等)購入に充当する予定である。
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