研究課題/領域番号 |
19K03385
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
兎田 幸司 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (60794948)
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研究分担者 |
小澤 貴明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90625352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 時間知覚 / 条件づけ / 学習 / 運動 / 記憶 / 薬理 / オプトジェネティクス / マウス |
研究実績の概要 |
時間の認識は、視覚や聴覚など他の知覚系とは異なり、時間を処理する受容体や、時間情報のみを担っている脳部位が存在しない。ヒトを含めた動物は、自らを取り巻く外部世界から受け取る感覚情報と、自己の感覚運動情報を統合することによって、時間の認識を生み出さなくてはならない。その意味で、時間は「主観的な体験」であるといえる。これまで心理学では、数秒から数分の時間認識について研究が行われ、時間に関する仮説が積み重ねられてきた (Buhusi & Meck, 2005)。しかしながら、動物の時間認識を検証するために用いられてきた従来のオペラント条件づけ手続きは、訓練に長期間を要し、動物が課題中に自由に行動できるために時間認識と行動表出の側面が混同されるといった問題点を包含していた (Machado & Keen, 1999)。この問題を解決するため、研究代表者は近年、動物の時間認識を効果的に調べる画期的な手法を開発した (Toda et al., 2017)。頭部固定されたマウスを用い、リッキング(舐める行為)を反応として利用することで、身体運動の要因をできる限り排除し、試行ごとの動物の主観的な時間認識の開始と終了のタイミングを計算理論によって切り出すことに成功した。数ヶ月以上の訓練を要した従来のオペラント課題に比べ、本課題では、1-2週間の訓練によって、マウスの時間認識を検出することができる。本研究の目的は、上述の課題を用いて時間認識に関わる神経基盤を明らかにすることである。3年計画での2年度目にあたる本年度においては、前年度に行った最初期遺伝子の発現によって見出された時間に関係する脳領域に対して、光遺伝学による神経活動の操作を行った。また、記憶に関係するとされるNMDA受容体やアセチルコリン受容体の薬理学的な操作によって、時間認識の正確さと記憶の関係についても明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、頭部固定と自由行動下の両方における古典的条件づけ課題の装置を整備し、時間の認識に関する遺伝子発現の探索、行動薬理学・光遺伝学・化学遺伝学的な操作などを行う実験が稼働している。これまでに、グルタミン酸NMDA受容体およびムスカリン性アセチルコリン受容体の薬理学的な阻害によって、過去の自由行動下のオペラント課題で得られていた結果と同様に、頭部固定においても時間知覚の正確さを阻害するということを明らかにし、記憶や時間以外の学習、消去、再獲得との関係について明らかにした。光遺伝学や化学遺伝学といった操作技術に関しては、遺伝子改変マウスを導入し、繁殖させたことで、効果的な神経細胞種選択的ないし経路選択的な操作が可能になった。国内の共同研究については、大阪大学の小澤貴明博士と情報共有を行いながら、相補的な関係で研究を進めている。こうした進捗状況から、本研究課題の進捗状況に関しては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
薬理学的な阻害実験の結果については、論文にまとめている段階であり、今後は、国際学術誌へ投稿する予定である。光遺伝学的な操作の実験の結果についても、興味深い結果が得られているので、個体数を追加し、国際学術誌に投稿する準備をしていく。また、時間認識課題を遂行している最中の瞳孔サイズや瞬きの検出も成功し、学会発表などでフィードバックを得て、追加のデータを取っている段階であるので、こちらも2021年度内に国際学術誌へ投稿したいと考えている。 研究の大きな研究の展開としては、遺伝子改変マウスや行動実験系など、設備に関しては申し分ない状態に整備できているので、今後は心拍の測定や電気生理学、ファイバーフォトメトリーなどの技術を立ち上げることによって、行動と神経活動の因果関係だけではなく、相関関係についても明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う緊急事態宣言の発令などによって、研究費の使用に関して一部の計画の変更があった。次年度使用額は導入が遅れた物品の購入のために使用する予定である。
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