研究課題
「時間とは何か」という疑問は、古来より、心理学者だけではなく、芸術家、小説家、哲学者、科学者、そして一般高等市民の心を捉えてやむことのなかった、根元的で深遠な、人類史上の最重要課題の一つである。その「時間」を認識する心や意識の働きとされるような認知機能が、物質である脳の電気化学的な活動の結果として、どのように生じているのかという疑問は、現代においても依然として謎に包まれたままである。こうした「時間の認識」は、視覚や聴覚など他の知覚系とは異なり、時間だけを処理する受容体や、時間の情報のみを担っている脳の部位が存在しない。ヒトを含めた動物は、自らを取り巻く外部の世界から受け取る感覚情報と、自己の感覚と運動の情報を統合することによって、時間の認識を生み出さなくてはならない。本研究においては、時間の知覚に対するムスカリン性およびニコチン性のアセチルコリン受容体の阻害の影響を調べた。頭部固定を用いた実験系においても、ムスカリン性アセチルコリン受容体の阻害は時間予測のばらつきを増加させた。ニコチン性アセチルコリン受容体の阻害は時間予測に影響を与えなかった。時間情報と空間情報に基づく頭部固定による逆転学習課題を新しく開発し、マウスがこの課題を短期間の訓練で学習することを明らかにした。また、時間知覚課題遂行中の瞳孔、目の大きさ、瞬きなどの生理指標の測定を行なうことにより、時間の知覚に伴う生理指標の変化についても明らかにした。さらに、時間課題遂行中の全脳での最初期遺伝子の発現を調べ、海馬を中心とした脳領域に対して光遺伝学的な操作による神経活動の操作が時間知覚に及ぼす影響についても明らかにした。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 7件)
PLOS ONE
巻: 16 ページ: e0254570
10.1371/journal.pone.0254570
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