研究実績の概要 |
DAVID (Da Amazing Voice Inflection Device (Aucoutuier et al., 2016))は、リアルタイムでプロソディ変調を可能とする音声システムである。本課題では、これを用いて話者の音声プロソディを陽性・陰性感情方向へ変化させ、会話時の感情や印象形成にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的とし、2者対話実験を実施してきた。 本課題当初、DAVIDで単一の話者の音声変調が可能であったものの、二人の話者にそれぞれ音声変調をかけ同時にフィードバックする既存装置がなかったことから、システム構築を行なった。数回の予備実験ののち、マイクで取得した音声をDAVIDシステム内でそれぞれ変調をかけ、それらの音声を外部ミキサーで合成し、各ヘッドフォン内に流すシステムを構築した。 この装置を用い、2019年度後半から2者対話時の印象評価実験を開始したが、新型コロナウィルスの蔓延によって、2020-2021年にかけ、対面会話実験の実施を全面的に中止せざるを得ない事態になった。しかし2021年後半から実験を再開することができ、当初の予定より本課題期間を1年延長し、研究を進めた。 最終年度である本年度は、取得したデータの解析と一部のデータについて外部発表(APS2022)を行なった。本実験で計測した参加者の心拍変動や皮膚電気反射のデータの追加解析結果や個人差の効果ついては、今後の国内/国際会議でも発表を予定している。また話者音声による対人印象変化の文化差や個人差の検討をさらに進めるため、The University of Chicago の Prof. Alexthander Todorov氏 並びにThe Hebrew UniversityのProf.Ran Hassin氏と打ち合わせを行い、共同研究の進め方について議論した。
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