本研究の目的は,近年の情報機器で安価に利用可能になってきたタッチセンサや視線センサ,身体センサなどの新しいセンサ技術を取り入れることで,さまざまな障害をもつ子どもたちの認知機能評価を行ったり,発達支援に使える課題プログラムを開発し,医療や福祉,教育の現場での実践を通してその有効性を評価するとともに,効果が認められたものについては,Webページを介して成果を広く社会に還元することであった。 研究最終年度となった2021年度においても,前年度から続く新型コロナ感染症の流行により,施設等での実践活動は大きく制約されることとなったため,障害児を対象とした十分な実践活動はできなかったが,以下のプログラムを開発し,公開に向けて最終段階の作業を行っている。 まず,タッチセンサのペン機能を利用して子どもの書字時の運筆分析が可能なプログラムを作成し,これを鏡映描写課題と組み合わせることで,視覚-運動協応の再構築や抑制機能の評価ができる課題とした。また,Microsoft社の非接触型身体センサであるKinectセンサを利用して子どもの身体イメージや視点取得に関わる認知機能を刺激・訓練を試みるゲーム型課題(サッカー,野球)と,VRゴーグルとハンドトラッカーを利用して身体イメージや視覚-運動協応の正確さを評価可能な課題を開発して,順次公開しているところである。さらに,現時点ではまだ基礎研究と技術デモンストレーションの段階ではあるが,リアルタイムCGで動き,VR環境下で提示可能で視線や表情を使ったコミュニケーションの評価・訓練に使えるソフトウェアロボットを開発し,公開した。
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