研究課題/領域番号 |
19K03395
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
岸本 崇 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20372576)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Rees代数 / トーリック多様体 / Fano多様体 / 双有理剛性 / ワイル群 / 森ファイバー空間 |
研究実績の概要 |
令和元年の本研究課題は,次に述べる3つの主なテーマに沿って,研究を大きく進展させることが出来た: 1) Adrien Dubouloz, Isac Hedenと共に,アフィン代数多様体への1次元のユニポテント代数群の作用に付随するRees代数の構造を解析する為の新しいテクニックを開発した.この研究は,同じくDubouloz, Hedenと共に行った2年間の共同研究で遂行した研究(この前回の研究結果は,既に学術雑誌に受理されており,間も無く出版予定である)の延長上にある.本研究で取り扱っている主対象は,アフィン代数多様体ではあるが,その背景にあるのは1次元のユニポテント代数群作用に関して同変に,適当な森コニックバンドルに埋め込むことが出来るという結果であり,双有理幾何学への応用が見込まれる.尚,今回の結果は,arXivに於いて公表済みである. 2) Ivan Cheltsov, Adrien Duboulozと共に,有限群作用の視点から,(非特異とは限らない)3次元トーリックFano多様体の双有理幾何学的性質を解析した.少し詳細に述べると,トーリックであるので,自己同型群に含まれる極大トーラスに関しては双有理剛性は有しないのであるが,対応するワイル群が非自明である場合には,極大トーラスとワイル群の半直積に関しては双有理剛性に近い性質を持つこともある.今回の共同研究では,極大トーラスとワイル群の半直積に関して,ある種の剛性を有する3次元トーリック多様体を分類することの成功した.結果については,現在,論文として執筆中であり,近日中にarXivに公開できる予定である. 3) Adrien Dubouloz, Karol Palkaと共に,アフィン空間の森ファイバー空間への埋め込みに関する共同研究を行った.結果として射影直線上の任意次元の森ファイバー空間へのアフィン空間の埋め込みを構成する為の,系統的な手法を開発することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題「有限群の線形表現と森ファイバー空間内の有限群に関する同変シリンダーの存在性」の視点に立てば,上記「研究実績の概要」で述べた3)の研究が,最もその研究課題の趣旨に沿っている様に思われるが,実は1),2)の諸研究は3)の研究に間接的に繋がっている.当初のアイデアとしては,本研究課題に沿った3)の研究に最初に着手する予定であったが,同変シリンダーを含む状況とはある意味では真逆の状況であるケース(より正確には同変的に双有理剛性を有するケース)を先ずは分類することで,最終的に同変シリンダーを含むケースの対象を絞り込むことが出来るという考えに至った.その様な背景があって,2)の研究が偶発的に開始することが出来たということは,思い掛けない副産物であった.上述した様に,2)は極大トーラス群とワイル群の半直積に関して同変的に双有理剛性を有する,3次元トーリックFano多様体の分類が主テーマであるので,2)と3)とで必要となるテクニックは,大きく趣が異なる.3)で必要となるテクニック・理論を開発するという動機により,1)の研究が3)の着手する前に始まったことも,当初は思いもよらない副産物であった.1)では,主に1次元ユニポテント代数群の作用を有する,従ってシリンダーを有する高次元アフィン代数多様体の付随するRees代数を観察することにより,森コニックバンドルへ埋め込む為の1つの手法を提供することが分かった.ここでの手法・テクニックを線形系の視点を組み込んで一般化することにより,本来の3)の研究に着手する為の準備が完了した.結果として,Dubouloz, Palkaと共にアフィン空間を非常に広いクラスの森ファイバー空間に系統的にコンパクト化することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
上記「研究実績の概要」で述べた研究1),2),3)のうち,1)については既にarXivに公開済みであり,現在,数学の学術雑誌に投稿中である.2)と3)については,現在,それぞれの共同研究者達と共に,arXivに公開する為に執筆中であり,いずれについても近日中(おそらく2~3ヶ月後迄には)公開出来ると思われる.本研究課題の方向性に沿っている3)について,その主結果は,アフィン空間の森ファイバー空間への埋め込みのうち,底空間が曲線である場合(特に射影直線である場合)について主に考察をした.底空間が射影直線である場合には,本質的には一般には基底点を有する線形束の取り扱い,より正確に述べると,その様な線形束の基底点の解消と,その後に得られた基底点自由な線形束から定まる射に相対的に極小モデルプログラムの実行を明示的に記述することが重要になった.今後の3)の研究の延長上にある発展・一般化としては,次の3つの視点が考えられる: a) 3)の考察・結果を,適当な有限群に関して同変な視点で一般化する.与えられた有限群が自明である場合には,3)で得られている結果と一致する様な形で一般化出来れば理想的である. b) 3)では森ファイバー空間の底空間が曲線であったが,より一般的に底空間が正の次元の代数多様体である場合に,アフィン空間の埋め込みを記述する一般理論を構築したいと思っている.その場合は,線形束とは限らないより次元の高い線形系の基底点の解消を明示的に記述することが必要になる.線形束であれば,基底点の解消は比較的見やすいが,一般の線形系はこ基底点解消のプロセスがより複雑になることが想像出来る. c) アフィン空間に似ている(例えば位相的に可縮な)アフィン代数多様体の森ファイバー空間への埋め込みを分類する.当面は,Koras-Russell3-foldの埋め込みを分類することを目標とする.
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